Love story Chapter three-2
Chapter three -2
「ねえ、ジャック。お願いがあるの」
日曜日のショッピングセンターで久し振りのデート。
お隣同士で毎日顔を合わせてるからこうやって改まって出かけるのってちょっと恥ずかしい。
「うん?」
ジャックが私を見る。
「一緒にプリ撮りたい!1度やってみたかったんだ。彼氏とツーショットっていうの。いい?」
私はジャックの胸に両手を添えて顔を覗き込んだ。
「いいよ、そんな風にエリィに言われたら嫌だなんて言えないな。俺のプリンセスのお願いだから」
ジャックは私の髪を撫でながらそう言った。
プリ機発見!ブースに飛び込む!
だって恥ずかしいんだもん。
ジャックの手を掴んで中に引っ張り込む。
前にボウリング場でみんなで撮ったので今回で2回目。だからジャックもカメラに向かってポーズをとってる。
私はその横に緊張しながら棒立ちになってる。
カチャッ!1枚目。
2枚目はちょっと笑ってみようかなと思ったら突然ジャックが後ろから私を抱きしめた。
キャーッ。カチャッ!2枚目。
もうやだー。カメラ視線でカッコよく決めてるジャックの横で大きく口を開けて変な顔で映ってる私。
「エリィ、スマイル」
ジャックに言われてちょっとだけ微笑んでみる。
カチャッ!3枚目は無事見れるくらいの写真が撮れた。
ホッ。
「もう、びっくりするよ」
ジャックのほうに顔を向けてそう言った私の頬にジャックが手を添えた。
あーっ!カチャッ!4枚目。キスされた!
「ジャック、恥ずかしいよ。もう…」
私の唇はジャックの唇でまたふさがれた。
うーん、もうプリ撮ってることなんて忘れてしまいそう。
カチャッ!5枚目?!
もうどうでもいい。シャッターの音がしなくなっても私達はしばらくの間ブースの中で抱き合っていた。
「すみませーん、待ってるんですけどー」
次の人の声がした。
まずい。中から慌てて出て落書きプースで、出来上がりを見てキャーッ!
これは人に見せられないよー。
ジャックから画面を隠すようにして急いで落書きをする。
「見せてくれないのか?」
「後でね。携帯に送るから」
あー、疲れた。やっぱりジャックだから無事に済まないと思ったけどもう。
家に帰って1人でゆっくり見ようっと。
2人並んで家まで歩く。
「ジャック、来週だね。旅行」
「そうだな」
思わず立ち止まって、ジャックの後姿を見つめた。
信じられないよー。
うれしくて、うれしくて。
ずっと一緒にいれることが。
そして…
ジャックが振り返って手を差し出す。
繋いだジャックの手から、暖かいものが伝わってくる。
「晴れるといいなあ。ねっ、ジャック」
ジャックは黙ったまま繋いだ私の手にキスをした。
旅行に行くんだなあ、ジャックと2人で…
自分の部屋で今日ジャックと撮ったプリをこっそり見る。
キャアー、恥ずかしい。
1枚目くらいだよね、普通に映ってるの。
でもいまいちかなあ、なんか不自然。
他の写真を見直してみる。
こうして見るとそんなにひどくもないかなー、なーんて思えてきちゃった。
ジャックに抱きしめられてる写真とキスしてる写真をジャックの携帯に送った…
つもりがー。まずい、見間違えてジェイムズのアドレスに送っちゃったよ…
ピ、ピ、ピ!
メッセージだ!ジェイムズから。
もうどうしようー。
手が震えて上手く文字が打てない。もう電話したほうがいいかも。
「ジェイムズ、ごめんなさい。あの…」
「エリ、間違ってメール着たみたいだよ」
久し振りに聞くジェイムズの声。
「私、ごめんなさい。本当にもう。馬鹿だから…」
「いいんだよ。こういう間違いってよくあるから。でも気をつけたほうがいいよ。それより元気だった?」
ジェイムズは前と変わらず優しく話しかけてくる。
よかった、気にしてないんだなあ。ジェイムズは大人だから…
「うん、3年生っていろいろ大変だなーって。勉強も難しいし。ジェイムズ、大学はどう?お兄ちゃんは毎日忙しみたいでほとんど家に居なくて話すことが無いから」
「いろいろ大学であって忙しいんだよ。慣れなくちゃいけないからね」
「そっかー…」
会話が途切れてしまった。前はこんなこと無かったのに。
「それじゃあ、またね。本当にごめんなさい。おやすみ、ジェイムズ」
「おやすみ、エリ」
変な間の後に電話を切った。
ジャックに写真を送ろうと思って携帯を手に取ったけど、携帯の画面に映るジェイムズという文字を見てやめた。
ジェイムズ、もう私とジャックのことなんとも思ってないのかなあ。それか大学で素敵な人見つけたのかも…
ちょっと心がチクッと痛んだ。
なにかを手に入れるって一方でなにかを無くすことでもあるのかもしれない。
コン、コン
「お姉ちゃん、まだ起きてる?」
翔だ。どうしたんだろう。
「まだ起きてるよ、入っていいよ」
「なんか元気ないじゃん。またなんかしたの?」
「うーん、ちょっと自己嫌悪」
翔に今あったことを話した。
でも翔は黙ってる。やっぱり私のこと馬鹿だと思ってるかも。
ますます自己嫌悪、もう話題変えよう。
「お兄ちゃんもジェイムズも大学に行っちゃって淋しいなあ。ぜんぜん話もできないんだもん。なんかお兄ちゃんなんて私を避けてる感じもするし」
翔は溜息をついた。
「確かに今までは三銃士みたいにお姉ちゃんを守ってたからね、あの3人」
「なにそれって?」
「これだからなあ、お姉ちゃんは。お兄ちゃんとジェイムズとジャックだよ」
「あの3人が三銃士?」
「そう。前まではそうだったけど、今はジャックの仕事でしょ。ジャックがお姉ちゃんを守るんだから。あの2人はそれを見守ってるんだよ。黙って見守るのも楽じゃないってこと。お兄ちゃんだって、今までずーっとお姉ちゃんのことをお父さんの代わりに守ってきて、その役目をジャックに取られたって言ったら変だけどさっ。気持ちの整理っていうのかなあ、そういうのあると思う。まあ、お兄ちゃんもこのあたりで認識しないとね、お姉ちゃんがいつまでもお兄ちゃんの小さいな妹じゃないってことを」
ふーん、弟のくせに私よりわかってるって感じ。
私ってそんなに鈍かったのかなあ。こういうこと気付かなかった。
じっと翔の顔を見る。この子も大人になったのね。
学校じゃまだまだ子供って顔してるのに。
「ねえ、翔。学校どう?楽しい?」
「うん、問題ないよ」
「翔、2年生と3年生の女子に人気あるよ。ジョシュアも。でもジョシュアってクールよね。あんなにモテても知らん振りって感じだもん」
「だってジョシュアは女の子に興味無いよ。僕、コクられたから、ジョシュアに」
「はあ!?」
一瞬翔の言ったことが理解できなかった。
「僕は100%女の子が好きだからジョシュアの気持ちには答えられないって言ったけどね」
さらっと言ってのける、翔。
「そういうことかあ」
やっと気付く。
「ねえ、皆で映画館に行った時のこと覚えてる?あなた達なにかたくらんでなかった?」
「うーん、ジョシュアがいい加減そろそろくっついたらどうなんだって」
「くっつくって、なにが?」
「まあ、今だから言えるけどさっ。隣もいろいろあったみたいだから。お姉ちゃんとジャックが今の状況にいたるまで。まあ、そういうことでいつまでも仲良くしてよね、ジャックと。それじゃあ、おやすみ」
翔は多くを語らずそのまま部屋を出て行った。
ふーん、隣でもいろいろあったって?
なにがあったって言うのかなあ。
それに隣もって隣以外でもってこと?!
わからないことばっかり…誰か説明してぇ~