Love story Chapter three-4
Chapter three -4
どれくらい寝てたのかな…朝方目が覚めた。
まだあたりは暗くて空気が冷えていた。
隣では無防備な寝顔で軽い寝息をたてて眠り込んでいるジャック。
疲れたよね…二人だけなのにいろいろ気を使うことがあって…
私も気疲れって感じかな…温泉でのんびりっていくはずだったんだけどね…そうだ!
さっき露天風呂に入りそこねたのでジャックも丁度寝ていることだし…今入っちゃお。
「あー、気持ちいい」
外の空気は冷えていたけどお湯に首までつかって頭だけ出して丁度よかった。
少しだけトロっとしたお湯が皮膚をツルツルにしてくれるみたい…これで肌きれいになれるかな…
腕を撫でてたらなんか昨日のことを思い出しちゃった…初体験…なんかくすぐったい。
思い出すだけでまた顔が熱くなりそう。
ベッドの前で一時固まってしまった私はその後大胆にも、あなたが欲しいなんて言っちゃって…でも…ジャックはありがとうって言ったくれた。
ジャックはとても優しかった…初めての私を気遣ってくれてた…
それはジャックにとって辛かったと思うけど…自分の感情を抑え私を傷つけないようにって…
私はジャックのシャツのボタンを外して彼の素肌に顔をうずめた。
引き締まった胸。ジャックの匂いをいっぱい吸い込む。
ふっと体が浮きジャックがベッドに私を横たえた。
ジャケットとシャツを脱いで私にゆっくり自分の体を重ねるジャック。
こんなに近くにジャックの素肌がある。
そして私も一糸まとわない産まれたままの姿になって2人は愛し合うんだ…
でもちょっと待ってよ。
友達の話やドラマではその前にシャワー浴びるんだったような!?
「ジャック、シャワー浴びなくていいの?」
私はちょっと変かなと思ったけど聞いてみた。
「俺は気にしないよ。どちらかと言うとエリィには今シャワー浴びて欲しくない。シャワーでエリィのいい匂いが流されちゃうからね」
「私がいい匂い?トワレの匂いとか?」
「そういうんじゃなくてエリィの体の中から醸しだされる匂いって感じかなあ」
どんな匂いなんだろう。ぜんぜん気付かなかったけど。
「凄くいい匂いで思わず抱きしめてしまいそうになるんだ」
「それってフェルモン?そんな匂い出して私、歩いてるわけ?でも誰にも言い寄られたことなんかないよ」
「たぶん、俺にだけ効く魔法の匂いかな。今日は朝からずっと近くにいたから頭がクラクラしてバスに揺られてた。景色なんか見てる余裕無かったよ。エリィに飛びつくのを必死に抑えてたからさ」
とジャックは笑う。そして自分の体の匂いを嗅ぐふりする。
「でもそれって俺が臭いってことかい?」
「違うってば。ジャックもすごくいい匂いだよ。本当だって」
私はジャックの背中に腕を回してきつく抱きしめた。
ジャックは私の顔を優しく大きな両手で包むと真っ直ぐ私の瞳を見つめてキスをした。
唇に軽く触れられているだけなのに頭の中がクラクラしてきて、息がしめってくるのがわかる。
今日のために新調した下着。
ジャックは大人っぽいのが好きなのかなって思って黒いレースの下着にしようと思ったけど、それは私らしくないような気がしたのでちょっとかわいいシンプルなものを選んだ。
そして洋服ダンスの引き出しを開けてはこの日のことを思ってその下着を眺めていたっけ。
私はジャックにブラウスとスカートを脱がされて下着だけになった。
その姿をずっと見つめるジャック。
「恥ずかしいよ、そんなに見られたら」
私は目を閉じて体を硬くした。
カチャカチャとジャックがジーンズを脱いでる音がする…
「目を開けて俺を見て」
ゆっくり開けた目の前には産まれたままの姿のジャックいた。
裸のジャックはまるで美術の時間に習ったギリシャの彫刻のように綺麗だった。
男の人の体がこんなに綺麗だなんて。
流れるような筋肉につつまれた硬い体。
私の子供のような体はジャックの綺麗な体とつりあわない。
ちょっと悲しくなってジャックから顔を背けてしまった。
「どうしたんだ、エリィ」
ジャックが心配そうに私の顔を覗き込む。
「だって私の体、子供ぽくって魅力ない。ジャックはとても素敵なのに」
「馬鹿だなあ、俺はエリィの全てが好きなんだ。もちろんそのかわいい胸も赤ちゃんのようにすべすべの肌も…」
そう言うとジャックは私の肌に顔をよせた。
ジャック、優しくしてね…
「ジャック…」
私はお風呂のお湯を肩にかけながらふと呟いた。
「うれしいな、名前を呟かれるのも」
いつの間にかジャックが後ろに立っていた。
「一緒に入っていいかい?」
そう言って湯船に足を入れた。
「あっつー」
ジャックは熱いのを我慢しながら肩までつかった。
「ロブスターになっちゃうよ、大丈夫?」
私は心配して言った。
「その前に出ないとな、でもちょっと…」
そう言うとジャックは私を抱き寄せた。
「エリィ…俺だけのエリィなんだよな…」
ジャックの腕の中で恥ずかしいんだけどうれしいって思う自分にちょっとびっくり。
裸の付き合いってあるけどまさに…これ?
ジャックが私を膝の上にのせたのでお互い向き合うような感じになった…
熱を帯びた琥珀色の瞳…そっと頬に触れていたジャックの手がなにか求めるように首筋を通って鎖骨のところで止まった。
「お風呂に入ってるエリィはすごくセクシーだよ。こんな姿見せられたらオレもう我慢できない…」
お湯の流れる音と私達の唇の重なる音だけが静粛の闇に響いた。
私はベッドに横たわっていた。
たった今、なにが起こったのか理解できなくて。
ジャックは湯船から私を抱えてベッドに運んだ。
お風呂で体が熱くなっていた勢いか少し強引だった。
初めての時より痛くて私は思わず止めてと言ってしまった。
ジャックはハッとして私から体を離した。
そしてシーツについたシミを見て言った。
「Oh,shit.You idiot,Jack!!」
ジャックはベッドから飛び降りてそのままバスルームに閉じこもってしまった。
私は痛みをこらえてベッドから降りてバスルームまで歩いてドアをノックする。
返事が無い…
シャワーの音だけが聞こえてくる。
私から体を離した時のジャックの目。
大きく見開かれたその瞳の中に私の知らないジャックがいた。
どうしたんだろう。
それにしてもあの反応は普通じゃない。
心配になってドアを開けて中に入った。
シャワー室の床にうずくまってお湯に打たれているジャックを見つけた。
私はお湯を止めようとして手を伸ばした。
「冷たい!これ水じゃない。何してるのジャック。こんなことしてたら風邪ひいちゃうよー」
私は蛇口をひねって少し熱めにお湯を出した。
そして羽織っていたバスローブを脱ぎシャワー室に入って床にうずくまっているジャックを抱き起こした。
ジャックは泣いていた。
嗚咽がシャワーのお湯の音と重なる。
手には石鹸が握りしめられていた。
「ジャック、どうしたの?私は大丈夫だよ。ちょっとびっくりしただけだから。叫んだりして驚かせちゃったよね。ごめんね」
私はそう言ってジャックの瞳を覗き込んだ。
「エリィ。どうしようもないんだ、俺は…」
そう繰り返すだけのジャックをしっかり抱きしめ、私はシャワーに打たれていた。
長いこと熱いお湯を浴びていたのでジャックの体も温かくなった。
私はジャックを立たせて手に持っていた石鹸で体を洗ってあげた。
そして自分の体についた石鹸を洗い流してお湯を止めた。
ジャックにバスローブを羽織ってベッドに連れて行く。
ここには寝れないなあ。シーツについたシミを見て思った。
でも和室に布団が敷いてあるからそっちで寝ればいいか。
2人で和室の布団の上に横になる。
ジャックは黙って天井をじっと見つめたまま。
私は大丈夫だってことを伝えたかった。
ジャックの横顔にキスをして抱きしめようとした。
「俺はエリィの体に触れる資格なんて無いんだ」
そう言って向こうを向いてしまった。
私は背中から腕を回してジャックを抱きしめた。
「じゃあ、私がジャックを抱きしめるのはいいんだよね」
ジャックを抱きしめながらテイラースウィフトのラブストーリーをハミングした。
私の大好きな曲…
ジャックは瞳を閉じてじっと聞いていた。
そしてゆっくり振り返って私を見た。
「エリィ、ごめん。俺自制できなかった。大事なエリィを傷つけてしまった。エリィを守るって、大事にするって言ったのに。それが悔しくて、自分が情けなくて…」
「しーっ、もういいから。私も自制できなかったから。ジャックとどうなってもいいって思ったくらいだったもの」
そう言ってジャックにキスをした。
「私達まだ若いんだもん。お風呂一緒に入ったの、ちょっと刺激強すぎたかもね」
「エリィ…どうしてそんなに優しいんだ。こんな俺でも側にいてくれるのか」
「当たり前じゃない。私はジャックの全てが好きなんだもの」
「エリィ、俺のエリィ。愛してる」
私はそのジャックの言葉を大事に胸にしまった。
そして私達は朝まで抱き合って眠った。
愛し合っていれば、2人を引き裂くものなんて無いと思いながら。
朝起きたら私の痛みは和らいでいた。
来週、佐々木先生の所に行く予定だからその時に聞いてみよう。
佐々木先生はレディースクリニックの先生で私は生理不順でよく診て貰っていた。
私は生理不順のためにピルを飲んでいてそれが切れるので来週もらいに行く予定。
でもそれまでにはよくなってるとは思うんだけど…念のためかな。
ジャックはまだ隣で低い寝息をたてて眠ってる。
私の大好きなジャック。
いろいろあったけど私にとってこの旅行は一生の宝ものだよ。
初めてがジャックでよかった。
ジャックが初めてじゃないのはわかってたからそれはいいんだけど、でもちょっと気になるかも。
ジャックの初めての人ってどんな人だったのかなあ。
ジャックも初めての人のことを思い出すのかな…