Love story Chapter three-6
Chapter three -6
3年生になってから本当に忙しい。
補修や塾通いが増えてジャックと2人だけでゆっくりできる時間があまり無い。
一緒に学校に行って帰るぐらいの時間だけ。
この間ピクニックに行ったのも、もう前の話。
ジャックと2人きりになりたいな。
ジャックの肌のぬくもりが恋しいよ。
私達は旅行の後からそういうことはしてなかった。
ジャックはぜんぜんそんなこと顔に出さないけど私に魅力無いのかなあ…
それともあの時のことをまだ気にしてるのかなあ…
もうすぐゴールデンウィークだから2人でまたどこかへ行こうって誘ってみようかな。
でもまたカナダに帰っちゃうのかも。
今度言ってみようかな、私も連れて行ってって。
「ねえ、ジャック。うちで一緒に勉強しようか」
もうすぐ英語のテストがある。
「教えて欲しいの。ちょっとつまづいちゃってて。お願い、ジャック」
ジャックはちょっと戸惑ってるみたい。
やっぱりまだお兄ちゃんとキマズイからかなあ。
「お母さんがね、この頃ジャックが家に来ないからどうしたのって。私達が仲良くやってるか心配みたい」
なんか考えてるジャック。
「ねっ、いい?」
「わかったよ。久し振りにおばさんの顔を見に行こうか」
「そう言ってくれるとお母さんも喜ぶよー。ありがとう。じゃあ、着替えたらうちに来てね。待ってる!」
私はそう言って家に入ってお母さんにジャックが勉強に来ることを伝えた。
「久し振りよね。今日、駅前にできた新しいケーキ屋さんからケーキを買ってきてあるのよ。ジャック、ケーキ食べるでしょ」
「食べる!大好きみたい。お母さん、ありがとう。じゃあ私、着替えてくる」
ちょうど私が着替えて2階の自分の部屋から下に降りた時に玄関のドアベルが鳴った。
「ジャック、いらっしゃい。どうぞ。久し振りね」
お母さんがジャックをダイニングルームのテーブルのほうに案内する。
「お勉強するんだったらここのほうがいいわよね。おやつも用意してたから。ケーキ好きなの選んでね」
「ありがとうございます。おばさん、お元気そうですね」
ジャックがケーキを選びながら言った。
「私は元気よー。ほら、えりもここに座って。ジャックにケーキを取ってあげなさい」
私はジャックの向かいに座ってお皿にジャックの選んだチョコレートケーキをのせてジャックに渡した。
お母さんもしっかりテーブルについて選んだケーキを食べている。
なんとなく気まずい雰囲気…
そこに翔が学校から帰って来た。
ふっー。
「おかえりー、翔も一緒にケーキ食べようよ」
ジャックの姿を見つけて翔の表情が一瞬固まったような気がした。
でもすぐに笑顔になってジャックに挨拶をする。
「先輩、いらっしゃい。あっ、うまそうなケーキ。僕も頂こう」
翔も一緒に食べてくれるのでさっきの気まずい感じが無くなった。
「今日、英語の勉強をジャックに教えてもらう予定なの。翔はなんか聞きたいこととか無いの?」
私は翔に目で"うんと言って"と合図した。
「あっ、そうだ。宿題でわからないとこ、あった。僕も教えてもらおうかな」
ほっ。翔、ありがとう。お母さんと3人だと息がつまりそうだったのよ。
私達はケーキを食べ終えて勉強を始めた。
ほとんど勉強も終わって私はジャックと2人きりで話しがしたかった。
でも私から自分の部屋にジャックを連れて行くのはちょっと気が引けた。
そう思っていたら突然翔がテレビを見始めた。
お母さんにテレビの音が大きいと注意されて翔は言った。
「僕、この番組見たいんだよ。勉強だったらお姉ちゃんの部屋でしてよ。そのほうが落ち着いて出来るでしょ」
仕方ないわねとお母さん。
「じゃあ、ジャック。私の部屋で続きしよう」
チャンス!ジャックの手を掴んで2階に上がった。
ダイニングルームを出る時にちらっと翔を見た。
翔はお母さんに見えないように私にウインクをした。
こいつ…私達のためにワザとテレビなんか見るって言ったんだ…
ありがとう、翔。
「ここ、私の部屋。あっそうか、ジャック知ってるよね。あの時、ジェイムズを起こしてもらおうと思ってお願いしたんだった…」
ジャックの顔が曇った。私はドアを開けてジャックを中に入れた。
「どうぞ。ジャックの部屋の窓から見えるでしょ、私の部屋」
ジャックは目を閉じて大きく息を吸い込んだ。
「でもこうやってエリィの部屋の中に入るとエリィの匂いがいっぱいで勉強どころじゃないかもな」
ジャックは笑顔になって私の勉強机の前にある椅子に座った。
ジャックは部屋の中を見渡していたけど視線が私のベッドでさり気なくとまった。
なんか淋しそうな、悲しそうな顔をしてるジャック。
ジェイムズが私のベッドで寝たこと、まだ気にしてるのかなあ…
ここで苦しそうに私を見たジェイムズ。
あの時は自分の気持ちがわからなかった。
でも今は…
私はベッドに腰をかけてジャックを見つめた。
ジャックはただ私を見つめ返すだけ。
「ジャック…」
私はジャックのそばに行ってジャックの手を取った。
そしてベッドの方へとジャックを導いた。
私とジャックはベッドに腰をかけてお互いを見つめる。
「ジャック…ここに横になって…」
ジャックは驚いた顔をした。
「べつに変なことしないから、安心してよ、ねっ」
私にそう言われてベッドに横になるジャック。
そのジャックの上に布団をかけた。
「暫くそうやっててね!」
「うーん、エリィ!理解できない…俺はどうしてこんなことしてるんだ?」
「いいからっ!もうちょっとガマンしてよ」
私は机の上に参考書やノートを広げた。
「うーん、眠くなってきた。エリィ、俺寝ちゃいそうだよ。本当に寝ちゃったらどうするんだ」
「そうしたら起こすから寝てていいよ…」
「知らないぞ。エリィのお母さんに見つかったって!」
もーっ、それを言われると今にも母さんが部屋に入ってきそうな感じがする。
「わかった!それじゃ、ベッドから出ていいよ」
ジャックはますますわからないという顔をしてベッドに腰をかけた。
私はジャックの寝てたところに顔を寄せた。
「うーん、ジャックの匂いがする。うれしい!」
本当にうれしくて顔の筋肉が緩む。
そんな私をジャックは不思議そうに見つめる。
私はジャックの隣に腰をかけた。
「ジャックの匂いに包まれて夜眠れたら淋しくないなっていつも思ってた。いつも学校で一緒でも、家に帰ってきて窓の向こうにジャックがいるって思っても、夜独りになると淋しくて、淋しくて」
「エリィ…」
ジャックの胸に顔を埋めてジャックの匂いを肺いっぱい吸い込む。
「ジャック、ずっと一緒にいたい、離れたくないよ」
ジャックは私を優しく抱きしめて言った。
「エリィ、がんばって同じ大学に行こう。そしたらずっと一緒だ」
「うん、がんばって2人で一緒に大学合格しようね」
「さっ、勉強!勉強!」
ジャックは私をベッドから引っ張りあげて参考書を私の手に乗せた。
「うん…」