Love story Chapter three-8

Chapter three -8

  

学校帰り…二人で歩くこの道。

いつもはずっとどこまでも続いて欲しいと願いながら歩くんだけど…でも今日は早く家に着いて欲しかった。

「エリィ、今日あんまり元気なかったみたいだけど」

ジャックが心配そうに私の顔を覗き込む。

「そんなこと無いよ」

「腹が痛そうだった」

「あっ、うん。ちょっとね。でも大丈夫だから」

「ちょっとって、病院で見てもらったほうがいいんじゃないか」

「本当に大丈夫だって…痛てて…」

「エリィ!」

お腹を押さえてかがんだ私をジャックが抱きかかえる。

「大丈夫なんだって!もう…女の子の日だから…」

「女の子の日?…あっ」

「もうジャックのバカ!気付いてよ」

ジャックは顔を赤くして俯いた。

「でも念のために佐々木先生に診てもらったら…心配なんだよ。エリィになにかあったら俺の責任だ」

「ジャック…そんなに言うんだったら今から行ってみる、先生の所に。それだったらジャック、安心できるんでしょ」

「本当か?」

「心配だったら一緒に来る?」

どうしようか真剣に考えてるジャックを見て焦っちゃった。

「冗談だってば。ボーイフレンドと一緒に婦人科なんて日本じゃ考えられないよー」

そんなことしたら末代まで言われるって。

「先帰ってて。後でちゃんと報告するから」

しぶしぶ頷くジャックと別れて佐々木先生のクリニックに向かう。

もう、ジャックって心配症だなあ。あの調子じゃ、毎月私の女の子の日をチェックされそう。

クリニックに入る。ラッキー、今日は空いてる。

受付を済ませて待合室で自分の番が来るのを待つ。

やっぱ、学校帰りに制服のまま来るのって目立つかも。

なにも悪いことしてるんじゃないから堂々としてればいいんだけど。

でも周りのお姉さん達の視線が…

そのお姉さん達がみんないなくなって、私の名前が呼ばれて診察室に入る。

「先生、こんにちは」

「えりちゃん、元気だった?ボーイフレンドとうまくいってる?」

私にとって先生は気さくでなんでも話せるお姉さんのような存在。

今日診てもらいに来た事情を話す。

「もう、ただの生理痛だって言ったのに。頼むから先生に診て貰ってくれって言うんですよ。なにかあったら俺の責任だー!なんて」

「興味深いなー。いくら外国人でも高校生でそのくらい彼女の体のこと考えてるのって。エリちゃんの彼氏に会ってみたいわね」

「ここまで着いてきそうな感じだったので先に家に帰るように言ったんですけど」

先生の目が笑ってる。

「うーん、待ってるみたいだよ。えりちゃんのこと」

先生は窓から外を眺めて言った。

「あっ、ジャック。あんな所で何してるんだろうー。やだー、不審者みたい!」

「ねえ、えりちゃん。えりちゃんが最後だからよかったら彼氏呼んでみたら?本人が来る気があったらだけど」

私は携帯でジャックにクリニックに入ってくるか聞いた。

「わかった」

やだー、来る気だよー。

それからすぐに診察室にジャックが入ってきた。

先生が受付のお姉さんに今日はもう終わりなのでクリニックを閉めてくれるように言った。

そして受付のお姉さんが帰って私達だけになった。

先生はジャックを真っ直ぐ見て言った。

「ジャック君ね。私が佐々木先生、よろしくね。君のことはえりちゃんから聞いてるわ。心配なんだよね、えりちゃんのこと」

「はい。僕達…」

「うん、わかってる。えりちゃんの初めての人だものね」

「先生…もう恥ずかしいよう」

「大事なことよ。えりちゃんの体のこと、理解してもらわないと。カナダではちゃんと性教育が行われてるのよね。確か小学校くらいから」

「はい」

ジャックが答える。

「うん、それで君のほうはどう?心配なこととかは?」

「大丈夫です。エリィが心配するようなことはありません」

「わかったわ。えりちゃんの体はまだ発育途中だから生理痛とかも、もう少し続くと思うの。でもなにか心配なことがあったらすぐに診察を受けることは大切よ」

ジャックは真剣な顔をして先生の言葉に頷いている。

「それじゃあ、あんまり遅くなるとまずいわよね。玄関は閉まってるから裏口から出ようか」

私達はクリニックの裏口から先生と一緒に出てそこで先生と別れた。

分かれ際に先生がジャックに言った。

「えりちゃんを大事にしてね」

そしてジャックは黙って頷いた。