Love story Afterwards -5 (James)

Afterwards -5 (James)

  

エリ達が来てから1週間が過ぎた。

家族全員、かなりの寝不足状態が続いている。

半分冗談、半分本気で耳栓でもして寝ようかと両親やジョシュアが言っていた。

でも、なにかあった時のことがあるのでそれもできない。

両親だけで週末、旅行にでも行ってもらおうか…。

そしたら2人もゆっくり休めるだろうし…。

ちょっと言ってみよう…。

そんなことを考えていたら、いつものようにジャックソンの夜泣きが始まった。

しかし…エリは毎晩これで大丈夫なんだろうか。

ジャックソンと昼寝をしてるから大丈夫だと本人は言ってるけど。

瞼が重くなってきた。

でも今晩のジャックソンの泣き声はいつもより凄いかもしれない…。

そう言えば、昼間に公園に行ったって言ってた。

そのせいかもしれない。これは朝まで眠れないな…

あれっ、隣のジャックの部屋のドアが開く音がした。

エリがジャックソンを連れて入って行くようだ。

暫くするとジャックソンの泣き声が聞こえなくなった。

一時的でまた始まるんじゃないかと覚悟してたけど、隣の部屋は静まり返ったまま。

どうしたんだろう…2人ともちゃんと寝てるのだろうか…。

突然訪れた静けさのために強烈な眠気が…。

今晩は眠れる…

目を閉じたと同時に俺の意識はどこかへ消えてしまった。

 

朝、目が覚めた。

時計を見て信じられなかった。

一晩中寝てた…。

エリ、ジャックソンは?

2人がジャックの部屋に入って行ったところまでは覚えてる。

ベッドから飛び降りてジャックの部屋を覗く。

誰もいない…

急いで1階に降りて2人を探した。

あー、よかった…。

2人はいつものように朝ご飯を食べていた。

その横には清々しい顔をした両親が。

「エリ、おはよう。昨日の夜はジャックソン、寝てくれたんだ?」

エリは目をくるりと回して頷いた。

「そうなの。泣き始めた時あまりにも凄いから、ちょっと場所を変えてみようと思ってジャックの部屋に行ってみたの。そしたらジャックソンが大人しくなって、気付いたら寝てたっていう感じなの。ほんと不思議…」

取り合えず、みんな久し振りに寝れたようなのでよかった。

俺も今日は大学のカフェにコーヒーを買いに通う必要は無さそうだ…。

やっぱり人間は夜眠らないと駄目なんだ。

今日1日、体の切れがぜんぜん違った。

いつもは午後になると、ただ気力で動いているだけだった。

家に帰って来て、両親もジョシュアも同じなんだと感じた。

みんな多少疲れが見えるものの、夕食のテーブルで大あくびをすることは無かった。

でも…今晩も寝てくれるんだろうか…ジャックソンは。

ジャックソンが泣き始めてエリはすぐにジャックの部屋に行ったようだ。

昨晩のように、ぴたっとジャックソンの泣き声は止まって静寂が訪れた。

でも…不思議だよな。

ジャックの部屋だとジャックソンはよく眠れるんだ。

そうだ…眠れるうちに寝ておこう。

…でも、目が覚めて眠れない。

そっとバルコニーに出て隣のジャックの部屋を覗く。

窓際に置かれたベッドに眠るエリとジャックソンの姿がかすかに見える。

ちゃんと寝てるようだ。

ジャックソンなんて大の字になってる。

まったく…ジャック似か。

安心して部屋に戻ろうと思ったその時、体が固まった。

寝ている2人の傍に白いモヤのようなものが見えたから。

なんだろう…そう思って目を凝らして見つめる。

でも、そのモヤのようなものは消えていた。

寝ぼけてたのか…それとも目の錯覚だったのか?

そうだよ…寝不足で目が霞んだに違いない。

部屋の中に戻って読もうと思っていた本を手に取った。

でもベッドの上でページを何枚かめくってすぐに、ほどよい眠気に包まれた。

あー…眠れることがこんなに幸せだったとは…おやすみエリ。

  

今日は日曜日。

このふた晩よく眠れたこともあるし、天気も良いのでみんなで公園にピクニックに行くことにした。

少し風が強いけど、久し振りの青空が気持ちいい。

公園で遊ぶ子供達もうれしそうだ。

その中で一際目立ってるのがジャックソン。

エリが厚着させ過ぎて、スノーマンのようになってるから。

公園で遊んでいる子供達は薄着だ。

「7月だけど日本に比べて寒いし、風が冷たいんだもの。ジャックソンが風邪でもひいたら困る…」

エリは心配して言う。

確かに風邪なんかひかれたら大変なんだけど…それにしてもちょっと着せすぎじゃないかな…。

エリはジャックソンを心配そうに見つめる。

大事に大事に育ててるんだよね、ジャックソンを。

その気持ち…わかるよ、エリ。

「あっ…」

エリが小さく声をあげた。

砂場で座って遊んでいたジャックソンに、他の子が勢い余ってちょっとぶつかってしまった。

ジャックソンはバランスを崩して横に倒れてしまった。

エリが駆け寄って抱き起こしたので、ジャックソンは泣きそうになっている。

「ジャックソン、どうした?それくらい大丈夫だよな、男の子なんだから」

ジャックソンは俺の顔をじっと見つめて変な顔をした。

でもすぐに泣き顔からいつものジャックソンの笑顔になる。

「よーし、次はブランコにでも乗るか!」

俺の方に腕を伸ばすジャックソンを抱いてブランコへ。

ジャックソンが乗ったブランコを押す俺を、黙ってじっと見つめるエリ。

俺が余計なことをして気を悪くしたのかな…。

帰り際、心配になってエリに話しかけた。

「エリ、さっきは悪かった。エリが心配してジャックソンを抱き起こした時に邪魔をしてしまったようで…」

エリは首を振って言った。

「違うの…。駄目だなって、思っちゃって。私はジャックソンを甘やかしてばっかりで…。なにかあったらどうしようってすぐに手をかけてしまう。やっぱりパパって必要だなって。ジャックソンが大きくなって男同士の話とかどうしたらいいんだろう。私…、ジェイムズオジサンに聞きなさいって言ってもいいかな…」

エリ…

「もちろんだよ、ジャックソンが必要な時はいつでも。エリが僕を必要な時だって」

「ありがとう、ジェイムズ。これからもよろしくお願いします」

俺はエリとエリに抱っこされているジャックソンを強く抱きしめた。

俺はいつでも2人を見守ってるよ。

  

「ジャックソン、ジャンプ!」

エリがシャワーに入っている間、ジャックソンの相手をする。

ジャックのベッドの上でジャンプをして遊んでいるジャックソン。

まだ10カ月なのにもう歩き始めてどこにでも行きたがる。

でもまだ足取りが不安定なのでたまに転ぶこともある。

そのおかげで俺達はジャックソンの後をハラハラしながら追いかける毎日。

ジャックも歩き始めたのが早かったと母親が言っていた。

こんなことも似てるんだよな…。

ジャンプが飽きたのか、楽しそうにベッドの上で転がっているジャックソン。

この部屋がお気に入りでよく来たがるってエリが言ってた。

そのせいか、ここだと夜泣きもしないで朝までぐっすり寝てくれる。

おかげでみんな、夜眠れるようになった。

どうしたんだろうか…ベッドに転がって遊んでいたジャックソンが机の方へ行きたがる。

でも机の上にはジャックのラップトップしか置かれて無い。

ラップトップ…。

あっ…そうだった。

ジャックの部屋を整理していた時に偶然日本製のUSBメモリを見つけた。

なにが入っているのかわからないのでは処理ができないと思い、中身を調べてみた。

それはジャックの日記だった。

日本に行ってから書き始めたようで、引越しの日からの思い出が綴られていた。

エリに渡そうと大事にしまって置いてそのままになっていた。

渡さないと…。

「あーっ、気持ちよかった。ジェイムズがジャックソンを見てくれてると思うと安心してシャワー浴びれるよーありがとう」

エリが洗いたての髪をタオルで拭きながら部屋に入って来た。

「ジャックソン、ちゃんとジェイムズの言うコト聞いてた?」

俺の膝の上でニコニコしているジャックソンにエリは言った。

「おりこうにしてたよな、ジャックソン」

「ほんと、すっかりジェイムズに懐いちゃって。でも悪いことしたらちゃんと叱ってね、ジェイムズ。でも…ジェイムズのお母さんが言ってたけど、ジャックソンってジャックの小さい頃によく似てるって。ジェイムズもそう思う?」

「そうだね、イタズラして見つかった時に見せるあの顔なんかそっくりかもしれない。大きくなったらますますジャックに似てくるんじゃないかなっ。そうしたら…」

…エリが涙ぐんでしまった。

ごめん…ジャックソンがジャックに似てきたらエリには辛いのかもしれないね。

「ゴメンね…この頃強くなって泣かなくなったんだけど。…って言うかジャックソンを育てるのに泣いてる余裕もなかったから…。でも…ここでみんなに優しくしてもらって気が緩んじゃったかな。駄目だなぁ…わたしって」

涙を拭いて笑うエリを思わず抱きしめたくなった。

「ジェイムズ、家族のみんなはどうなのかな。私には元気に接してくれるけど、本当は…」

エリはいつも俺達を心配してくれるんだよな。自分のことよりも。

2人で少し話しをした。

エリは12月のジャックの一周忌に来れなかったことを詫びた。

ずっと気にしていたけど言い出せなかったと。

時間が俺達の傷を癒してくれる。

ジャックがもうここにいないことを少しずつだけど、毎日の生活の中で認めることができるようになった。

それまではただ自分の気持ちをねじ込めて1日、1日を過ごすだけだった。

どうしてこんなことが起きたのか、受け入れられなかったから。

でも今は受け入れられそうな気がする。

そして…ジャックの生きたその意味を言えるようになりたい。

でも辛いよ…。

「ジェイムズ、私にもジェイムズの辛さをわけて…。今までずっと私の分を背負ってくれたんだもん。今度は私が…ジェイムズの支えになりたいの。ちょっと…頼り無いかもしれないけどね」

エリ…君がいてくれて本当によかった。

長男として、しっかりしなきゃと強がってるけど…本当は…。

「エリ、ありがとう。これからは一緒に乗り越えていこう」

エリは大きく頷いて満足そうに微笑んだ。

「ねえ、ジェイムズ。私、考えてたんだけど…ジャックソンのゴッドペアレントになってくれる?」

突然のことで驚いてしまった。エリがそんなことを考えていたなんて。

「もちろんだよ。でも本当に俺でいいのか、エリ?」

「ジェイムズだからお願いしたいの。みんながジャックソンを見守ってくれてるけど、私の中でジャックがそう望んでるような気がするの…だからお願いします、ジェイムズ」

ジャック…俺は誓うよ。ジャックソンを…2人を守るって。

「それじゃ、そろそろ私達は寝ようかな。ジェイムズ…いろいろありがとう」

エリがジャックソンを抱き上げて言った。

そうだ…渡さなきゃ。

「エリ…これなんだけど。部屋を片付けてた時に見つけたんだ。ジャックの日記が収められてる。エリが持ってるべきだと思うんだ」

エリは俺から受け取ったUSBをじっと見つめる。

「エリに会ってからのことが残されてるんだ。だから…」

「ありがとう、ジェイムズ。必ず読むから…いつか…泣かないで読めるって思える時が来たら…」

エリ…。

2人におやすみと言って部屋を出た。

あの中にあるジャックの伝えられなかったエリへの想い。

エリにも見せなかった1人の男としてのジャックがいる。

エリはどう受け止めるのだろうか…。

ほんとにこれでよかったんだろうか…エリに渡してしまって。

ジャック…。

あっという間に時間は過ぎていった。

2人が遊びに来て2か月が経とうとしてるなんて。

明日日本に帰ってしまうジャックソンに少し早い誕生日プレゼントを買うため、家族みんなでモールに来ている。

おもちゃ売り場で興奮しているジャックソンをみんなが笑って見ていた。

でも…その中のエリの顔から笑いが消えていくのに気付いた。

あれは…まさかこんな所で…。

エリの視線の先にはエミリーがいた。

エミリーは何か言いたげな顔をしてジャックソンを見て息を呑んだ。

「この子がジャックの残していった…」

「ジャックソンよ」

ジャックソンを抱っこした母が言った。

「そ、そう…ジャックソン…」

じっとジャックソンの顔を見つめるエミリー。

「こんにちは、エミリー。元気…だった?」

エリがエミリーに声をかける。

「う、うん…」

でもエミリーはエリの顔を見ることなく、ジャックソンを見つめ続けている。

「エミリー、抱っこする?ジャックソンを」

エリにそう言われてエミリーは驚いた顔をしてNOと言って立ち去った。

「エリ…気にしないで。きっと突然で驚いたのね」

母親はジャックソンを連れておもちゃの支払いをしに行った。

エリはエミリーが立ち去ったほうをずっと見つめている。

「エリ…」

なんて言っていいのかわからない自分に腹が立った。

「ジェイムズ、私は大丈夫だよ。それよりエミリー…辛いと思う。でも、私になにができるかなって思ってたの」

エリはいつもそうなんだ。自分のことより他の人のことを思って…。

だから…俺はそんなエリが…。

肩を叩かれてハッとする。

親父とジョシュアが俺を見ている。

何も言わずただ俺の肩に手をかけている親父。

2人も俺の気持ちに気付いている…。

そんな2人に心配をかけたくなくて笑ってみせる。

 

夕食は2人の送別会ということで母親がたくさんの料理を作ってくれた。

その料理を囲んで楽しい時間が過ぎていく。

話題がジャックソンの夜泣きのことになるとみんなが顔を覆った。

でも、今度来る時はもうないんだろうな…夜泣きも。

ちょっと早いバースデーケーキを頬張るジャックソンの写真を撮る。

このやんちゃな甥っ子ともお別れか…。

そしてエリとも…。

あっという間にジャックソンの寝る時間になった。

エリがみんなに礼を言ってジャックソンを連れてテーブルを後にする。

夕食の片付けが終わり、そしてシャワーを浴びた後、2人のいるジャックの部屋を覗く。

「エリ、準備できたかい?なにか手伝うよ」

来た時はほとんど無かった荷物が帰りは大型スーツケース2個分になっていた。

「なんとか入ったけど、こんなにいっぱいジャックソンに頂いちゃっていいのかなぁ。ジェイムズのご両親にはほんとによくしてもらって。また会えなくなると思うと淋しいなあ」

「でも…また会えるよ。今度はこっちから遊びに行ってもいいしね」

ほんとのところ…次はいつ会えるのだろう。

クリスマス…もっと先かも…。

「ねえ…ジェイムズ。私…感じてたことがあるの。ジェイムズが自分のことを "俺" って言うのを聞いてなんかジェイムズが大人の男の人になったんだなぁって。前から落ち着いてて、頼りになるジェイムズだったけどね。私の友達も大学生になって、みんな急に大人になったような気がするの。なんか私だけ、取り残されちゃったようでちょっと焦ってる。早く私も大学に復学したいなぁって」

「その気持ちわかるよ。でもジャックソンがもう少し大きくなったら嫌でも毎日大学に通うことになるんだから。そして後からあの時はよかったなぁーなんて思うかもしれないよ」

「そうね。今に感謝して毎日がんばらなきゃ。ジェイムズ…ありがとう。じゃあ…そろそろ寝ようかな。明日、飛行機の中で居眠りしちゃたりしないように」

「そうだね、じゃあ…おやすみ」

エリとジャックソンにキスをして部屋を後にした。

自分の部屋に戻ってベッドに横になる。

俺が大人の男になったか…エリに言われたことを思い出した。

いつからかな…自分のことを "俺" って言うようになったのは…。

こっちに戻ってきてからだったと思う。

ジャックが逝ってしまってから、自分が強くならなければって思う気持ちがそうさせたのかもしれない。

頼りになるか…。

そう言うエリだって、大人になったと感じさせられることがあったよ。

俺なんかよりもぜんぜん勇気のあるエリに。

明日、2人を空港に送っていく。

早く寝ないとな…寝不足で運転するのはマズイから。

…けど、壁の向こうの2人のことを思うとなかなか眠れない。

隣からはなにも聞こえてこないので2人は寝たんだろう。

そっとバルコニーに出て夜風にあたる。

なぁ…ジャック。

今、おまえは何を思ってるんだ。

俺は…俺はあの2人を日本に返したくなんかないんだ。

ずっと傍にいたいし…いて欲しいんだ。

2人がいない毎日なんて…考えただけで心が張り裂けそうなんだよ。

ジャック…。

カーテン越しにジャックの部屋を覗く。

すやすや眠るジャックソンを抱きしめながら、エリは寝顔にまで微笑みを浮かべている。

ジャック…おまえの大事なエリとジャックソン。

俺はこぼれそうになる涙を堪えて上を向いた。

あれは…。

また2人のベッドの傍に白いモヤのようなものが見える。

今日は見間違えなんかじゃない!

そしてよく目を凝らしてみるとその白いモヤのようなものが人の姿に見える。

まさか…ジャック。

おまえはこうして毎晩2人を見守っていたのか…。

いや…そんなことあるもんか。

頭を振ってもう一度ジャックの部屋を覗いた時には、その白いモヤのようなものは消えていた。

呆然としてバルコニーから部屋の中に入ってベッドに横たわった。

ジャックが2人に会いに…まさか。

今見たのは現実のものなのか…それとも俺の精神がおかしくなってきているのか…。

ジャック…。

 

「そろそろ行かなきゃね」

エリが名残惜しそうにジャックソンを抱きしめている母親からジャックソンを受け取る。

仕事の都合でどうしても空港に来れなかった親父以外、みんなで1台の車に乗ってきた。

コーヒーショップで出国ギリギリまで2人と。

でも、もう行かないとホントマズイ。

「日本からジャックソンのこと、ちゃんとメールするので心配しないでね。いろいろお世話になりました。みんなも元気で」

辛いのを我慢してエリの荷物を持ってみんなに声を掛ける。

「さぁ、エリ行かないと。乗り遅れたら大変だよ」

俺達は抱き合って別れのキスをした。

「それじゃ、行ってきます…かな」

エリが照れた顔で言った。

そして何度も振り返って俺達に大きく手を振りながら人の波の中に消えていった。

「行っちゃったね…元気出してよ、母さん」

ジョシュアに肩を抱かれて母親が歩き出す。

これから暫くの間、慣れるまで淋しいだろうな…。

本当にエリとジャックソンは行ってしまったんだ…。

3人で黙ったまま車に乗り込む。

まだ2人の匂いが車内に残っていて、胸が締め付けられる思いだ。

その辛さを振り切るように車を走らせる。

運転中、何度も空港でのワンシーンがフラッシュバックする。

別れ際にエリが呟いた… "ジャック…"

目を凝らして人ごみの中のなにかを見つめていたエリ。

俺はエリが誰かを見てそう言ったような気がした。

声をかけた俺になんでも無いとエリは言ったけど…。

でも…なにか気になる…。