Love story Afterwards -17 (James)
Afterwards -17 (James)
今日はジャックの命日。
俺はいつものように記念碑に向かって話しかける。
「ジャック、無事結婚式が済んだ。これで俺とエリは夫婦になったよ。エリ…凄く綺麗だった。親父や母さん、エリの家族も、みんなみんな俺達を祝してくれて嬉しかった。本当にいい式だったよ。こんなに幸せな気持ちで、今を生きていられることに感謝だよ」
本当にいろいろなことがあった。
ジャスティンやジェイク、エミリーのこと。
もう2度と心の底から笑いあえることなんて無いって思っていた。
でも…日本に行ってエリやエリの家族に出会い俺達の運命は変わった。
傷ついていたジャックの心を癒してくれたエリ。
2人で幸せになれると思っていたのに、ジャック、オマエは行ってしまった。
心残りだったのはエリ…そしてエミリーもだったんじゃないか。
心配するな、エミリーは変わったよ。俺達の結婚式にブライズメイドとして出てくれた。
エリが頼みたいって言い出した時にはちょっと困惑したけど、今はよかったと思う。
それにエミリーの気持ちも聞けて彼女を理解することもできた。
エリから頼まれて彼女に会いに行ったんだ。やっぱり彼女も驚いて最初は断られたよ。
でも、どうしてもお願いしたいっていうエリの気持ちに動かされたのか了承してくれた。
それから彼女と話す機会が増えて…ある日、話してくれた。
彼女がずっと心の中に抱えていた本当の気持ちを。
どんなにオマエを愛していたか。二人で住んでいた時、幸せだったこと。
本当にオマエとやり直したかったと…
でも病室で、倒れたオマエを看病していたエミリーが見たのは…
熱にうなされながらエリの名前を呼び続けるオマエの姿だった。
エミリーは言ったよ、自分の名前じゃなくて傷ついたと。
でも、その時決心したって。オマエを自由にしてあげたいと。
だからあえて冷たく別れた、オマエがエリの所へ行けるように…
それが…オマエへのエミリーの愛の形だったんだ。
そして…今でもオマエを愛していると。
ジャックソンを通してオマエを見ているのか、いい意味だけど可愛がってくれる。
エミリーおばさんって呼ばれて必死にお姉さんと呼ぶように話していた姿が忘れられないな…
あれは大変だぞ、ジャックソンに彼女でもできたら。
そうだ、みんなのことも報告しないとな…
「ジャック、これを見ろよ」
オーストラリアから届いたカード。
そこには真っ黒に焼けた顔から白い歯を見せて笑っているリョウが…そしてその横にはリョウに負けないくらい日焼けした女の子が。
"地球のへそに行ってみようと思う"
俺達の結婚式の後にリョウは言った。
中学生の頃に文通していたカナダ人の女の子とのリョウの淡い思い出。
偶然オーストラリアで会ったとカードには書いてある。
2人ともワーキングホリデーで今はゴールドコーストでサーフィン三昧とのことだ。
とても幸せそうなリョウの顔が見れて嬉しいよ。これからアイツの新しい人生が始まるんだよな。
カケル、ジョシュアともに将来を模索中ってとこかな。
ジェイク…学校に戻ってちゃんとやってるそうだ。
日本語を勉強して将来は日本に行ってみたいってこの前言っていた。
それからソウ…本がまた増版されたと聞いた。
みんながそれぞれの道を歩み始めている。
俺も負けてはいられないな…がんばらないと。
「ダディー」
あっ、来たようだ。
エリとジャックソンが花束を抱えてやってきた。
数奇な運命に導かれた3つの家族。
病院でのことが無かったら出会うことも無かったはず…
俺は日本に行くことも無く、エリにだって会ってなかった。
これから一つの家族としてつながっていく…
ジャックがジャスティンと一緒に俺達を見守ってくれてるはず。
ジャックの碑の横にはジャスティンの碑が並んで建っている。
喧嘩なんかしないで仲良くやってるか、これで二人とも寂しくは無いだろうか。
2つの花束、2人の弟の碑に捧げられる。
俺はジャックソンを抱き上げ、エリの肩を抱いて空を見上げた。
「ジャック、忘れない。エリとジャックソンを幸せにする…オマエと一緒に…これからも…俺の弟でありがとう」
そこには一筋の光が雲の隙間からさしていた。
それがキラキラ光って、まるでジャックがありがとうって言ってるようだった。
ー 終わり ー