Delicious Main 6
Main 6
「あと、どのくらいかなぁ…うっ…」
健太郎が辛そうに体をエビのように曲げながら時間を気にしてる。
今日こそは3分がんばってもらわないとなぁ…。
「ハイ、ハイ。まだまだだよー、がんばって」
隣で健太郎が唸っているのに私は昨晩のことで頭がいっぱい。
それは母親のこと…。
そうかなって思ってたけど…好きな人ができたのかなって…。
母親がさり気なくそのことを話題にしようとした。
…でも、私は聞きたくなかった。
彼女の言葉を遮って自分の部屋に入って戸を閉めた…。
ふーっつ。
そのことがあって今日はなにをしても中途半端な一日だった。
健太郎といても上の空。
もう…。
「うっー、佐藤さん…もう無理だよ…我慢できないよぉ…あっイタッ、痛い!」
悲鳴で驚いて隣を見ると、あらら…。健太郎が大事なところを押さえて顔を歪めて泣きそうになってる!
「どうしてこんなに我慢したのよー。体に悪いじゃない!バカなんだからもう…」
「だって…まだまだだって佐藤さんが言ったから…」
慌てて腕時計を見ると4分を越えていた。
「わっ、やったよー記録更新!もう我慢しなくていいよ。すっきりしちゃっていいから」
それでも健太郎は丸まったまま唸ってる。
「高橋君、もういいんだってば。マジで体壊すよ」
どこまで我慢する気なのかしら、今日は…。
私が帰り仕度を始めたその横で蚊の泣くような声がした。
「出ないんだよ…痛くて…イタッ…」
はーっ?どういうこと?
もしかして我慢し過ぎて硬くなりすぎちゃったってこと?
えーっつ、それってマズイよー。
「高橋君、大丈夫?」
咄嗟に健太郎の硬くなり過ぎた大事なところに手が伸びた。
「あーっ、痛い。佐藤さん…もう突然だよ…」
これはすごい!こんなになっちゃったら痛いわー。
痛みで体中に力が入ってしまってるからますます痛みが倍増しちゃってる。
「高橋君、体の力を抜いて!リラックス、リラックス!そうそう、ヒーヒー、フーフー。妊婦さんがお産の時にするみたいな呼吸法。やってみて」
私がヒーヒー、フーフーとデモンストレーションをする横でそんなのできるかって顔をする健太郎。
もう、どうしよう…まず体の力を抜かなきゃ…少しリラックスしてからじゃないと駄目よ。
なにかで痛みから気を逸らさないと…。
「高橋君、この後ご飯食べに行こう!なにがいい?大好きなおそばがいいね!あの天ぷらそばにしようかっ?」
そんなのどうでもいいって感じで手を振り上げて健太郎はまたエビのように丸まってしまった。
うーん…仕方ない… これしか無いか…。
「高橋君、こっち見て」
苦しそうに私を見た健太郎の頬を押さえて健太郎の唇に自分の唇を重ねる。
私の唇の動きに少しずつ、少しずつ健太郎の唇が反応し始めた。
その調子、健太郎… 私の唇に集中して…。
健太郎の唇が薄く開いて私の舌を求めた。
うーん、大丈夫かなぁ…なんかの拍子で噛み付かれたりして…。
そんなことになったら笑えないよー。
ちょっと緊張しながら健太郎の薄く開いた唇を押し開けて健太郎と自分を絡ませる。
「うーん…佐藤…さん…」
健太郎の体から少し力が抜けてきてるのがわかった。
念のため健太郎の唇から離れてそっと下のほうに触れてみた。
さっきよりはなんとなく緊張がとけてきてるような感触。
もう少し…。
そう思って離そうとした私の手を健太郎が掴んだ。
「お願い…もう少しこのままで…」
熱を持った瞳で私を見つめながらまた私の唇を求める健太郎に嫌とは言えない。
こうなったのも私がちゃんと時計を見てなかったせいでもあるから…。
言われた通り健太郎の硬いかたまりに優しく触れながらまた健太郎と唇を重ね合わせた。
そうしてるうちに私の手に重ねられた健太郎の手が力を入れて自分自身を触れ始めた。
「そんなに力を入れてまた痛くなっちゃったらどうするの?」
「大丈夫…すごく気持ちいいから…もう少し…あっ…うっ…」
心配で手を離そうとする私を健太郎はもう片方の腕でしっかり抱きしめながら、私の手に乗せた方を激しく動かし続ける。
そして…健太郎は無事私の手の中で果てた。
「どう?もう痛みない?」
疲れきってベッドに横たわってる健太郎のそばに座った。
「うーん…だるい…下半身に力が入らない感じだよ…」
目を閉じたまま答える健太郎から離れてバスルームに向かった。
手を洗いたかった。
まだ健太郎が私の手の中にあったから…。
バスルームで手を洗ってると健太郎が入ってきた。
「佐藤さん、ごめんね。手を汚してしまった」
「いいのよ、洗えばいいんだから…それより…ごめんなさい。私のせいだよね、反省してる」
母親のことを考えていて健太郎のことは上の空だったから…。
「それはもういいから。記録も更新したことだしね。それよりあの痛みを耐えたご褒美ってことで一緒にお風呂入るってのはどう?」
えっっ?なにそれ?
それとこれは別でしょうが…でも確かによく耐えたしなぁ…。
「冗談、冗談。佐藤さんの困る顔を見たかったってことにしておこう。じゃあ、シャワー浴びるから待っててもらえるかなぁ。この後一緒にご飯たべようよ」
そう言って健太郎が服を脱ぎ始めたので私はバスルームから出た。
「やっぱりそばが1番だなー」
健太郎がおそばの汁を飲み干しながら言った。
「どう?記録更新した感想は?やったじゃない。まあ、アクシデントはあったけど…」
「うん、努力の甲斐があったかな。ちょっと自信がついた感じだよ」
「それはよかった。でも少しトレーニングは止めておいたほうがいいかもね。様子みたほうがいいよ」
「そうかな…」
ネットで見たけど我慢のし過ぎで他の問題が生じることもあるみたいだし…ちょっと時間を空けたほうがいいのかも…私と健太郎の関係にも…。
このところ一緒にいる機会が多いし…そのせいでお互いのことよく話すし…正直ちょっと戸惑ってる。
今まで男の子に自分のことなんて話したことも無いし、まして相手のことなんて興味無いから聞いたことも無かった。
セックスだけの関係…今どきの言葉で言えば、セフレ?
う、うん…それ以下かなぁ…私の場合、ほとんどの子と2回目は無いから…。
「佐藤さん…ぼーっとしてどうしたの?疲れちゃったよね、佐藤さんも」
健太郎に声をかけられるまで壁のほうを見たまま固まっちゃってたんだろうなぁ。
「ごめん、ごめん。考え事してた」
「ねえ佐藤さん…唐突なんだけど…名前で呼んでもいいかなぁ…佐藤さんのこと。苗字だとなんだか他人行儀でさっ…それに大学のクラスのやつらが僕達が本当に付き合ってるのかって疑ってるみたいなんだよね。佐藤さん、人気あるから…ナオミさんじゃあちょっと堅苦しいし、ナオミじゃあ、なんか僕が偉そうだし…それじゃあ…ナオってどう?」
名前で呼び合う?!高校生じゃないんだから…そんなことどうでもいいんじゃないかなぁ…もう。
…でもナオ…かぁ…
「ごめん。佐藤さん嫌だったらいいんだよ。呼ぶ感じを変えれば苗字だってそれっぽく聞こえるかもしれないし…」
「高橋君…ナオでいいよ、そう呼んで。じゃあ…私は高橋君のことをなんて呼ぼうかなぁ…それじゃ…健太郎でいい?ケンも短くていいけど高橋君の健太郎って名前、私好きだから…」
まあ…いいかっ。深く考えると疲れる…。
「じゃあ、健太郎…お店出よう」
呼んでみるとそう悪くないかも。第一に健太郎がうれしそうだし…。
特に今日は健太郎にひどいことしちゃったから…。
お店を出て駅で健太郎と別れた。
「ナオ…あした大学で…」
「じゃあ、あしたね…健太郎」
…うーん、なにしてんのかなぁ…わたし。
また健太郎のペースにのせられてしまった?!