Love story Chapter one-7
Chapter one-7
うーん、この頃朝のジョギングも苦にならなくなってきた。
体を動かすのが気持ちよくなってきたのもあるんだけど、それよりもジェイムズとの会話が楽しくて毎朝早起きしてしまう。
ジェイムズはいろいろなことを知っていて、でも押し付けがましくなく教えてくれる。
たまに英語で会話することもあって私の英会話力も上達したような(?)気がする。
「エリ、おはよう!」
ジェイムズがいつもの笑顔で走ってくる。
「おはよー、ジェイムズ。今日も天気いいね!!」
いつものように河原まで走ってそこで少し休憩。
「エリ、どうしたの。今日はあんまり元気ないような感じだよ」
「それがね、英語の授業でスピーチをしなくちゃいけないの。もちろん英語で。いろいろ考えてるんだけど上手く文章にならなくて、頭痛くなってきちゃった」
私はこめかみを押さえてとっても辛そうな顔をして見せた。
「僕が手伝おうか?」
「えっ、いいの、ジェイムズ。でも忙しいでしょ、勉強で」
「エリのスピーチを手伝うくらいの時間はあるよ。でも放課後は大学受験の補修があるからなあ。じゃあこの朝の時間を使おう」
ジェイムズが先生だったらがんばっちゃう。
「ジェイムズ、ありがとう。じゃあ、明日からお願いします。でもジャックは大丈夫かなあ。私達と逆に日本語でスピーチすることになってるの。
「うん、わかったよ。エリ、ありがとう。ジャックを気にしてくれて」
次の日、ジェイムズのコーチで私は英語のスピーチの練習をした。
ジェイムズの前で英語を話すのはちょっと恥ずかしい。
ほとんど日本語で話をしているのであらたまって英語でどーぞーっていうのがなんとも。
「ジェイムズ、恥ずかしいよ」
私はうつむきながらスピーチの原稿を棒読みする。
「エリ、これクラスの皆の前でするんだよね。僕の前で恥ずかしがってどうするの」
ジェイムズはクスクス笑いながら私を見る。
「だってクラスの皆は私がちょっとくらい変な発音してもわからないだろうけど、ジェイムズにはバレちゃう…
「それじゃあエリ、皆の前に立った時にあがらないおまじない的なものとして…」
そう言ってジェイムズは私の頬にキスをした。
えぇーこれじゃーもっとあがっちゃうよーと思いながら私は顔を赤くした。
「ありがとー、これでバッチリかな…頑張るね。そうだ、テレビで見たんだけどカナダではフランス語も公用語だよね。それってジェイムズ、フランス語も話せるの?」
「僕達が住んでいた所ではフランス語と英語を話せる人がほとんどだよ。でも他の都市では英語しか話せない人もいるよ」
「ふーん、すごいなあ。英語、フランス語、日本語も話せるなんて。ジェイムズ、今度フランス語も教えてね」
「エリは欲張りだなあー、まあ意欲旺盛なのはいいことだけどね。でもまずは英語からかな」
「はーい、ジェイムズ先生!!」
帰り際、ジェイムズがしきりに首を左右に動かしているのに気づいた。
「ねえ、ジェイムズ。首でも痛いの??寝違えたとか?」
「ちょっと肩と首がこってて。机にむかってる時間がこの頃長いから」
そう言って曲げたジェイムズの首がぐきっと音を立てた。
「ねえ、ジェイムズ。私、マッサージしてあげる。結構上手なんだよ」
ジェイムズに家の前にある低いブロックの塀に座ってもらってマッサージを始めた。
首と肩を触るとものすごくこっていてカチカチになっていた。
「うーん、すごく気持ちいいよ。エリ本当に上手だよ」
ジェイムズは気持ちよさそうに目を細めている。
少し肩と首が柔らかくなってきたので頭のほうに指をうつした。
地肌をマッサージするようにゆっくり指を動かす。
ジェイムズは私にされるままになっていた。
「ありがとう、すごく軽くなったよ。エリ」
ジェイムズは目を閉じたまま息を吐いた。
「えっ、もういいの」
「うん、今止めないとこのままずっとマッサージしてもらいたくなる」
「いいよ、もう少ししてあげる。ジェイムズにはお世話になってるもの」
私はマッサージを続けた。
ジェイムズの背中って広いなあ…
別れ際にジェイムズが私にウインクをして言った。
「またお願いしたいなあ」
ワタシはうんと頷いて家に入った。
あードキッとした…玄関のドアにもたれかかった状態でドキドキする心臓を押さえる。すんごく甘えた感じのジェイムズにキュン…やだ、なに考えてるんだろう…ワタシ。
学校に行くしたくをしなくちゃ。
学校に向かって歩いていると後ろからジャックが歩いてきた。
「おはよー、ジャック」
「ああ」
ああってジャック、今日は朝から不機嫌そう。触らぬ神に祟り無し。
私は前を歩いてる親友の祐美を見つけて駆け寄った。
気のせいか知らないけどジャックが授業中やけに首を曲げたりしてた…変なの。
やっと一日の授業が終わって帰る仕度をする。
その時も横でしきりに首を曲げたり肩を上げたり下げたりしてるジャック。
やっぱりこの人わからない…私はカバンを持って教室を出た。
その後をジャックが追いかけてくるのがわかった。
やだよ…またなんか言われるのかな…逃げるが勝ちなのだ。
速足で学校を脱出するぞぉ~
でも
ジャックは自然を装うように私の横に並んで歩いた。
そして首をさすりながらうーんと唸った。
うっ、またきた!なんか変なことしてる!
聞いたほうがいいかも…でもちょっとコワい…
「ねえ、ジャック。なんか朝からちょっと変な感じなんだけど…首がどうかしたの?」
私はジャックの首の辺りを見ながら言った。
「オマエって奴は!かわいくないんだよ」
ジャックは突然怒ったように言って前をどんどん歩いて行く。
やっぱり地雷を踏んでしまったのぉー勘弁してよーでもその言い方、頭くる!
「ちょっと、突然かわいくないは無いんじゃない。説明してよ」
追いつきながらジャックの腕を取った。
それでもジャックは黙ってどんどん歩いて行ってしまう。
「ジャック!!!もう知らない!!!」
私の忍耐力も限界にきてジャックを無視して帰ろうとした。
「ジェイムズにはしてやったくせに!」
ジャックが吐き捨てるように言った。
なんのこと?私が理解できなくていると腹立たしそうに続けて言った。
「マッサージだよ!」
あー、マッサージ。もしかして今朝のこと?
「ジャック、見てたの?」
ジャックは、もう知らないというような顔をして歩いていく。
なーんだ、見てたの。それで朝から変なことしてたの?私にマッサージして欲しくて?まったくこの子はわからない。
私は前を歩くジャックの後姿を見ながら笑ってしまった。
「ねえ、ジャック。マッサージしてあげようか」
「もう、いい」
小さい子供のようにまだ拗ねてる。
「本当にいいの?すごく上手なんだから、私」
「…そんなにオマエが言うなら」
ジャックは河原の土手に腰をかけて私に背中を向けた。
まったくお子様なんだから。
「ブレザー脱いでね。着てるとやりづらいから」
シャツの上からジャックの肩を揉む。
ぜんぜんこってなくてフニャフニャかと思ったら意外に筋が張っていた。
肩、首、頭と指を動かしてジャックの体を揉み解す。
一瞬、肩甲骨の隙間に指が滑り込んでジャックはビクッと反応した。
そして慌てたようにブレザーを羽織って立ち上がってしまった。
「もういいの?ちょっと痛かったかな?力入れすぎちゃったかも…」
「いや、…よかった、ありがとっ!」
なんか焦ってる感じだけど、どうしたんだろう。
「また言ってね、結構肩凝ってるようだから」