Love story Chapter one-12
Chapter one -12
私達の思った通り今朝も真由美と奈々に起こされた。
今日はジャックと一緒じゃないのでそんなに気合が入っていないだろうと思ったら大間違いだった。
「ジャックは一緒じゃないけど、映画村で他の学校の子と出会いがあるかもしれないじゃない!」
そう言うと2人はバスルームで髪をセットし始めた。
映画村のグループのバスが行ってしまって市内散策のグループが残された。
ほとんどが映画村に行ってしまって散策のグループは50人くらいだった。
ホテルから駅まで歩いて移動してそしてまず京都タワーを観光した。
京都の街並みが眼下に広がって面白かった。
これから歩いて散策するには上から様子が見れて丁度よかった。
古い町並みと京都駅のモダンさのコントラストがジャックには不思議に見えるみたい。
お寺やお城にとても興味があるみたいで真剣に見て歩いてる。
そういう面もあるんだなあ。こういうのぜんぜん興味なさそうな感じだったから。
京都タワーを後にして地下鉄で移動。
京都御所、八坂神社、円山公園とのんびり歩き回ってお昼になった。
各自適当にお店からなにか買ってきて公園で食べた。
私と祐美はお饅頭やお団子を食べながら午後の自由行動をどうしようか相談していた。
ジャックは私が買ってきたおにぎりを食べながら私と祐美の話を聞いていた。
「ジャックはどこか行きたいとこある?それかおみやげ買いとか…なにか希望あったら言ってね。」
私はジャックにもう一個おにぎりを渡しながら言った。
「どこかで母さんになにか買って帰りたいんだけど…良さそうなのあったら教えてもらえるとありがたいな」
ちょっと照れながら言うジャックが可愛く見えた。
「意外ねえ、ジャックってお母さんっ子なの?お父さんや兄弟にはおみやげ買っていかないの?」
私はいつものお返しでイジワルっぽく聞いた。
「男はあんまりおみやげとかに興味ないんだよ。話だけで十分だ。それにどこか旅行に行っておみやげを誰かに買って帰る習慣自体ないからさ」
「ふーん、でもお母さんを大事にするっていいことよね。なにかで見たんだけど外国では、お母さんを大事にする人は奥さんも大事にするんだって。」
私がそう言うと祐美が意味ありげにジャックに向かって言った。
「それじゃ、ジャックの奥さんになる人は幸せよね。お母さんと同じように大事にしてもらえるんだもん。えり、ジャックの奥さんにしてもらったら?」
祐美はジャックと私の顔を交互に見て頷いた。
ジャックはおにぎりを喉につまらせそうになって顔を真っ赤にしてむせてる…
祐美は時々今のような爆弾発言をするんだよなあ。
「なんで私がジャックの奥さんにしてもらわなきゃいけないのよ!」
私がムキになって反論したので祐美はますます自分に間違いないというような顔をして言った。
「ジャックとえり、お似合いだと思うよ。今日ずっと2人を見ていてそうだと思ったもの。ケミストリーを感じたって言うか…」
「はい、はい。そこまでぇー。みんな出発するみたいだよー私達も行かなきゃねー」
祐美は不服そうだけど仕方なく立ち上がった。
ジャックも突然祐美がとんでもないことを言ってのけたので、面くらったようで足早に皆のほうへ行ってしまった。
まったくこの子はただ者じゃないわ。
そう思いながら私は祐美と皆の所に行って先生の話に耳を傾けた。
先生がこれから自由行動にするので時間までホテルに各自戻るように言って、皆の携帯の番号を確認した。
私達も先生の携帯の番号を確認した。
皆、それぞれ行きたい場所があるようで早歩きで街並みに紛れていった。
私達はのんびりと歩きながら京都の町並みを眺めていた。
「これからどうしようかな。私はもうちょっとお寺見たい気がするんだけど、祐美は買い物したいんだよね。」
私達は大きなお土産屋さんの前で立ち止まった。お店では私達の学校の子達が買い物をしていた。
「丁度いいから私、ここで2人と別れるよ。あの子達の買い物ツアーに入れてもらう。おみやげいっぱい買わないといけないから」
そう言って祐美はお店に入って行ってしまった。そしてお店の中からウインクして、しっ、しっと私達を追い払う仕草をして笑った。
祐美は気をきかせたつもりなんだ。でも私とジャックはただのお隣さん同士でなにもないんだけどなあ。
2人きりになってしまったよー、どうしよう。
「行こう。お寺見たいんだろう」
そう言ってジャックが歩き出した。
「でもジャックの買い物は?」
「それは後でいい、先にエリィの行きたい所に行く」
ジャックと2人で京都の町を歩いてる。なんか不思議な感じ。
ジャックの後姿を見ながらぼーっとしてるとジャックが振り返って私の手を取った。
「時間までにホテル帰れないぞ」
ジャックに手を引かれて大通りから小さな路地に入った。
そこには小さなお寺があった。こんな所にひっそりとお寺があるなんて。
私達はその名前も知らないお寺の境内を歩いた。
紅葉した木々と京都の秋の青空がとても綺麗。それにこの静けさ。心が休まる思い。
私はうれしくなって目を閉じて微笑んだ。
「なににやけてんだよ?俺と一緒だからだろ」
「にやけてるんじゃないの。嬉しいんだもん。生きてるなーって感じるから」
ジャックは私の顔を見つめて私の言葉の意味を考えてるようだった。
「私達、今生きてる。今ここにいるんだって。毎日いろんなことがあってそういうこと忘れてしまっている。目の前の嫌なことばっかりに気を取られて大事なことを見失っているようで。どういう風に過ごしても同じように時間は流れていく。私達の高校2年生のこの時間は2度と戻ってこない。それだったらこの1秒、1秒を大切にしたいって思えてきて。でもジャックと一緒でうれしいってのも間違って無いよ。なにかを分かち合うって素敵なことだと思う。うれしいこと、楽しいこと、そして悲しく辛いことだって誰かとそれを分かちあえたら…だから今日こうしてジャックと1日を過ごせて思い出を分かち合えるのがうれしいの。そして時が経って今日のことを2人で笑って思い出せたらどんなに素敵かなあって思うの。」
私の話をじっと聞いていたジャックは私に背を向けて空を見上げて言った。
「今を生きるか…」
ジャックの後姿を見ながら私は思った。
ジャックはなにか心の中にしまいこんでる…なにか辛いこと…
ジャックが背負っている苦しみ、悲しみををちょっとだけでも私が背負えることができたら…そんなことおこがましい…のかな…でも…なにかしたいの…ジャックのために…