Love story Chapter one-13

Chapter one -13

 

小さなお寺を出てジャックのおみやげを見るために商店街に入った。

そこは昔ながらの小さなお店が並ぶ、地元の人が買い物をするような所だった。

見慣れない制服を着た私達を、道にでも迷ったのかしらというように見る地元の人達。

ちょっと場違いな所に来ちゃったかなと思って、急いで次の路地を曲がったその時、後ろから声がした。

「おまえらここでなにしてんだ。ここは観光客の来るとこじゃねえんだよ」

まずい、不良っぽい高校生くらいの男の子達に囲まれてしまった。

「金持ってんだろ、さっさと出せよ」

そう言って1人が私のカバンに手をかけた。やだっ、放して!

ジャックがその手を払いのけて言った。

「日本はフリーカントリーだろ。どこを歩こうがお前らには関係ないことだ。そこをどけ」

「外人が偉そうなこと言うな」

男の子達は怒ってジャックを囲んだ。

「止めて、お金ならあげるから。喧嘩なんかしないで」

私は叫んだ。

リーダー格の子が近づいてきて私の腕を掴んだ。

「金はもういらない。その代わりにコイツを持ち帰りさせてもらう」

そう言ってジャックに見えるように私の腰に腕を回して引き寄せた。

こんな奴に体を触られてることが嫌でたまらなくて涙が出てきてしまった。

「ジャック、逃げて」

そう言ってジャックの顔を見つめた私をジャックは真っ直ぐ見つめ返した。

「俺の女から離れろ」

ジャックが低い声で言ったかと思ったら私を押さえていた子を殴り倒した。

それを見ていた子達がジャックに殴りかかった。

そしてジャックはその子達を相手に喧嘩を始めた。

その騒ぎを聞きつけた商店街の人達がおまわりさんを呼んだようで走ってくるのが見える。

「やばい、逃げろ」

そう言って不良の子達は逃げて行った。

私達も学校に連絡なんてされてあとで面倒なことになるのが嫌で走って逃げた。

走って、走ってどこまで走ったのかなあ。もう大丈夫そうな所で止まって回りを見た。

誰も私達の後を追ってくる様子は無いので安心した。

ほっとしてジャックを見ると殴られたのか顔が赤くなっていた。

「ごめんね、私のために」

そう言ってジャックの赤くなった頬に触れた。

ポツ、ポツ、ポツ…雨が降ってきた。

さっきまではあんなに晴れていたのに。

ホテルに帰る時間が近くなってきていたので私達は走った。

ホテルまでもう少しのところで雨は本格的に降ってきた。

「これはダメだな…どこかで雨宿りしよう…」

ジェックはそう言うと近くのお店を指さした。

「あそこまで行くぞ」

びしょびしょに濡れてしまった私達はお店の軒先で雨宿りをした。

雨に濡れて急に体温が下がったようで私は震えていた。

ジャックはブレザーを脱ぐと私の肩にかけた。

「ジャックが風邪ひいちゃうよ」

慌ててジャックのブレザーを脱ごうとした私の手を掴んで言った。

「俺の言うこともたまには聞けよ」

軒先で濡れないようにジャックとくっついて雨が小降りになるのを待った。

濡れたシャツが体にくっついてジャックの肌が透けて見える。

濡れた髪が首筋に張り付いていて色っぽい。

濡れた肌を通してジャックの体の熱が私に伝わってくる。

私を俺の女と呼んだジャック。

でも咄嗟に口から出ただけなのかもしれない…

黙って雨が落ちてくる空を見上げるジャックの横顔を見つめながら、ジャックを意識している自分に戸惑った。

 

 結局そのままホテルに戻って時間には間にあったけど、ジャックのお母さんのおみやげを買うことはできなかった。

先生の点呼を受けて私達は別れた。

「ジャック、風邪ひかないように早く熱いシャワー浴びてね。お母さんのおみやげは明日時間あるから心配しないでね」

別れ際に私がそう言うとジャックは頷いて部屋に戻って行った。

私も部屋に戻ってシャワーを浴びた。

まだ祐美も真由美も奈々も戻っていなかったのでゆっくり入ることができた。

あー、気持ちいい。

冷たくなった体に熱めのお湯が心地よかった。

雨宿りをしていた時、私は確かに異性としてジャックを意識していた。

今までキスをされたり、抱きしめられたりしたけどこれほど意識したことは無かった。

でもこれもきっと修学旅行の魔法のせいで、またいつもの生活に戻れば忘れてしまうのかもしれない。

長い間熱いシャワーを浴びていたので私の体は十分温まっていた。

バスルームから出ると祐美が帰っていた。

私の顔を見ると待ちきれなかったと言わんばかりにどうだったと聞いてきた。

私はなにも無かったよーと言ったが祐美を誤魔化せなかった。

祐美と別れた後に不良に絡まれたことや軒先で雨宿りしたことを正直に話した。

「えりはそれでジャックをどう思うの?好き?嫌い?」

またまた質問攻めに合うけど答えられない。

だって自分の気持ちがわからないんだもん。

「自分の気持ちがわからないってことね?ジャックがはっきり、えりを好きって言ったわけでもないし。もう少し時間が必要ってことかな」

答えられないでいる私を見て祐美は1人で納得しいる。そんな祐美に私はイジワルな質問をしてしまった。

「祐美は私とジャックをくっつけようとしてるけど、それってなんかあるの?」

「言ったじゃん、二人にケミストリーを感じるって。それよ」

かなり慌てまくっている祐美を横目で見ながらこれはなにかあるなーと感じていた。

その後、真由美と奈々が帰って来て散策グループのというよりジャックがなにをしてたのか聞いてきた。

私と祐美は適当に話を合わせて、それより映画村の出会いはどうだったのか話を振った。

真由美と奈々はクスクスと顔を合わせて笑った。

よく話を聞くと結構カッコいい男の子達がいてしっかり写真に収めてきたとのこと。

でも溜息をつきながらやっぱりジャックよりカッコいい男の子はいないのよと言った。

ジャックはいつも側にいるのでそんなに超カッコいいと思ったことは無かったけど、

この2人が言うんだからジャックってやっぱりカッコいいのかもしれない。

夕食の時間が迫って2人は慌てて衣装がえに取り掛かった。

レストランに行くと女の子達はこれぞとばかりに着飾っていた。

明日は家に帰ってまた普通の生活に戻る。修学旅行の魔法がもうすぐ切れてしまう。

皆な名残惜しそうに最後の夜を過ごしていた。

私は目でジャックを探した。ちゃんとシャワー浴びて温まったかなあ。風邪なんかひいてないといいんだけど。

「ここ、ここ、ジャック。ここに座ってえ」

真由美と奈々の声が聞こえた。

振り返ると胸の前をちょっと開けたシャツを着たジャックが立っていた。

真由美と奈々はそのセクシーな胸元に黄色い声をあげた。

私は大丈夫なのねと微笑んでジャックを見た。

ジャックも大丈夫だ、心配するなというように見つめ返してきた。

それは私とジャックにしかわからないような一瞬のことで真由美や奈々には気付かれることは無かった。

私と祐美はジャックの頬についた赤いアザに大騒ぎをしている真由美と奈々の横を通り過ぎて部屋に戻った。

部屋で祐美が今日買ってきたおみやげとかを見せてもらいながら話をしたりして修学旅行最後の夜は過ぎていった。