Love story Chapter one-15

Chapter one -15

  

修学旅行から帰ってきたと思ったらあっという間に体育祭。

この時期は学校の行事がいっぱいで時間が過ぎてくのが早い、早い。

修学旅行以来、私はジャックと話らしい話をしてなかった。

別にお互いを避けていたわけじゃなくて、ただタイミングが合わなかったと言ったほうがいいのかな。

ド・ドーンと体育祭開催決定の狼煙が上がったのが聞こえた。

眠い目を擦りながらベッドから這い出る。

できれば体調不良とかで欠席したいんだけどお母さんが張り切っていてとてもそんなこと言えない。

すでに起きて台所でお弁当を作ってる。お兄ちゃんは準備とかでもう学校に行ってしまった。

私はのんびりご飯を食べながら秋晴れの空を眺めていたのにお母さんに早く行きなさいと家から追い出されてしぶしぶ学校に向かった。

珍しく玄関までお母さんが見送ってくれた。

「後で学校でね、お弁当楽しみにしててよー」

うそー、あんなに張り切ってる。どうして体育祭だと皆元気になっちゃうのかなあ。

親のほうが盛り上がってる。

それにこのジャージ、なんとかしてー、着たくなかった。だって格好悪すぎ。

全体は紺色で学年ごとに違う色の線が入ってる、とても今どきじゃないものなのだ。

1年生は緑、2年生は白、3年生は赤。

来年3年生が卒業したら新しい1年生が赤色になる。

卒業かあ、お兄ちゃんもジェイムズも来年居なくなっちゃうんだなあ。

それってすごく淋しい…

でもこれがお兄ちゃんと最後の体育祭になるんだからがんばろう。

そしていっぱい思い出を作ろー。

 

時間経つにつれて校庭は生徒の父兄や近所の人達でいっぱいになった。

その中に私のお母さん、お隣のお母さん、翔、ジョシュアの姿が見えた。

私のお母さんはしっかりお隣さんも誘って1番いい場所を陣取っていた。

体育祭が始まって1番最初は紅白対抗の応援合戦だった。

赤組はちょっと合ってなかったけど、白組はお兄ちゃんの指揮の下、完璧だった。

ここ数年白組の勝利が続いたので赤組は今年こそはと張り切っていた。

1年生から全員参加の100M走が始まった。

私は短距離が苦手だった。

だってスタートのピストルの音が怖くていつも耳を塞いでしまうので出遅れてしまうから。

あれってマジに心臓に悪いと思うんだけどなあ。

パン、パンとピストルの音が響く中、平行して2年生の玉転がしレースが始まった。

皆、転んだり玉に潰されたりしてギャラリーを沸かせた。

2年生男子の走る番が来てスタートラインの後ろに並ぶジャックの姿を見つけた。

ジャージの上を脱いでTシャツになってマジで走る気のよう。

ジャックとジェイムズは赤組なので白組キャプテンの妹の都合上、応援しづらい。

ジャックの番が来てスタートラインに並ぶ姿が。

ゴールを真っ直ぐ見つめる瞳には闘志メラメラの炎が~と言うのは大げさだけど本気みたい。

パンという音と共に皆走り出した。

ジャックは頭一つ分皆から出て先頭を走っていた。そしてそのまま逃げ切って1位でゴールした。

何だー結構走れるんじゃん。ジャックは私が見ているのに気付いて親指を立ててウインクをした。

あっという間に女子の順番が来てしまった。

ジャックはゴールの所に立ってこっちを見ている。

私の番が来て仕方無くスタートラインに立った。そして耳を塞いで地面を見る。

パンという音がして皆が飛び出したけどやっぱり私は出遅れてしまった。

一生懸命走ってゴールが見えてきた。

そこに私の名前を大声で呼ぶジャックがいた。

私は息が苦しくてもうゴールに立ってるジャックしか見えなかった。

私の名前を呼ぶジャックの胸に飛び込むかのようにゴールに突っ込んだ私はその勢いで派手に転んでしまった。

息も途切れ途切れで顔を上げた時には私はジャックに抱き起こされていた。

あまりに派手な私の転倒に赤組の子達は大きな声で笑った。

恥ずかしくて下を向いてしまった私を庇うように、ジャックはその子達に向かって笑うなと怒鳴ったので、ますます私は下を向いてしまった。

本当に穴があったら入りたいとはこのことだよー。

でも私は穴に入る代わりにジャックに連れられて医務室へ。

中に入ると医務室の先生に派手に転んだものねと言われた。

「さっきレースを見てたけどゴール前で突然走りが変わったわよね。そう思ったら転んでたけど」

「羽が生えたかと思ったんです」

私がそう言うと先生は頭も打ったのかしらと私の頭を触った。

本当はジャックの顔しか見えてなかったからなんて言えない。それもジャックが居る前で。

医務室を出て校庭に向かう途中、ジャックがボソッと言った。

「久しぶりだよな。話するの」

「うん、修学旅行以来かなあ」

でもその後の会話が続かなかった。

黙って歩いていると校庭でワーッという歓声が上がった。

3年男子のレースが始まったみたいだった。

校庭に出るとちょうどジェイムズがスタートラインに立っていた。

その何列かうしろにお兄ちゃんが立っていてジェイムズに何か言った。

ジェイムズはお兄ちゃんになにか言い返してゴールを見据えた。

レースはジェイムズの楽勝だった。

ゴールに立ってジェイムズは腕組みをしながらお兄ちゃんに挑発的な視線を送っている。

お兄ちゃんの番が来て私は自分が走るかのように緊張してきた。

耳を塞いで見ていたらジャックの手が私の手に触れた。

そしてなにも言わず私の手の上に自分の手をのせた。

小さくパンと音がした。

お兄ちゃんは綺麗なフォームでゴールを走り抜けた。

もちろん1位で。

100M走の予選が全て終わって決勝が始まった。

2年男子の決勝ではジャックがほとんどが陸上部の子達の中で健闘して6位だった。

そして3年男子の決勝の番が来た。

スタートラインに並ぶお兄ちゃんとジェイムズ。

完璧なスタートを切ったお兄ちゃんを追いかけるジェイムズ。

そのすぐ後を陸上部の先輩達が続く。

皆が息を呑んでレースの行方を見守った。

もう少しでジェイムズが追いつきそうな時お兄ちゃんはゴールして、ジェイムズが続いた。

2人とも肩を大きく上下させて息をしてる。

それでもお互いの健闘を称えるように肩をたたきあって、2人で手とあげて皆に手を振った。

お兄ちゃんもジェイムズもカッコいいよ。

この2人がもうすぐこの学校から居なくなってしまうなんて。

私は2人の勇姿をこっそり携帯で写真にとった。