Love story Chapter three-13

Chapter three -13

  

「僕達は3人とも本当に仲が良かったんだ。でもジャックの出生の真実がわかってから、ジャックは変わってしまった。家族とも距離が出来てしまって孤独だったんだ。そしてジャックは産みの親の所に会いに行ったけど会ってもらえなかった。エリがジャックから聞いたようにジャックは全てに対して心を閉ざしてしまった。でもそんな時、ジャックはエミリーと出遭った。ジャックにとってエミリーは全てを受け入れてくれるたった一人の人間だった。そして自然に2人は愛し合うようになった。まだ16歳だった2人はまっすぐな気持ちのままお互いを求めた。そして夏休みキャンプに行った時、2人で永遠の愛を誓い合ったという。でも悲劇は起こってしまった。初めて二人が結ばれた時…あまり衛生的によかったとは言えない状態だったようなんだ…それでエミリーは感染症にかかってしまって…。16歳の子供で親にも誰にも相談できず、病状が悪化してショック症状を起こして救急車で運ばれてしまった。命に別状は無かったけど…エミリーは…子供が産めない体になってしまった。エミリーの両親は敬虔なクリスチャンだったため、ジャックとエミリーを許すことが出来ず二人は引き離されてしまった。それでもジャックはエミリーに会いに何度も病院や家を訪ねたんだ…でもその度に追い返されて会えることは無かった…。2人のことはすぐに噂になったよ、ジャックはすごく辛い思いをしていたんだ。僕達はジャックを守ろうとした、少しの間どこかへジャックを連れて行こうとしたんだ。でもアイツは逃げたくないと言った、エミリーから離れないと。でもエミリーの家族は街の人の噂から逃げるようにどこかへ移って行ってしまった。ジャックはエミリーを探したよ。でも16歳の子供になにができたのだろうか。僕達の両親とエミリーの両親の間で話し合いがあったのを知ったのはかなり後になるんだけど、2度と2人を会わせないということと、僕達の両親が慰謝料をエミリーの両親に支払ったこと。ジャックはそれから荒れたよ。酒を飲んで女の子を連れて帰って来ることなんて毎晩だった。どうせ皆に女の子を傷物にするような奴だと思われてるんだったらそれでいいって。でもどんなに荒れてもエミリーのことを忘れることなんてできなかったんだ。そして自分のしたことで愛した女の子の一生が狂ってしまったことへの責任を感じて自分自身を責め続けてきたんだ、アイツは」

ジェイムズが辛そうに目を伏せた。そういうことがあったのね、ジャック。

私はジェイムズの話を聞いてやっと4月に旅行に行った時のジャックの反応のワケがわかった。

「ジェイムズ、大丈夫?ごめんね、辛いことを話させてしまって。でも私、知りたいの。ジャックのコト全てを」

ジェイムズは頷いて話を続けた。

「ジャックも僕達も疲れきっていたんだ。皆の視線をいつも感じながら毎日暮らしていたから。そんな時に親父の日本への転勤の話があって。僕達はまた新しく始められるかもしれないと思って日本に行ったんだ。そしてジャックは君に会ったんだ。日本に行ってもジャックはエミリーのことを忘れてはいなかったと思う。でも日に日に日本での生活に馴染んでいって、もとのジャックを取り戻していったんだ。クリスマスにカナダに帰った時に偶然エミリーがバンクーバーに住んでることを知ったジャックは会いに行ったんだ。でもやっぱり会わせてもらえなかった。それどころかエミリーから2度と会う気は無いのでほっといてくれという手紙が来たんだ。そしてジャックはクリスマスの翌日に日本に帰ってしまったんだ。でも誤解しないで欲しいんだ、エリ。アイツは君に会いに帰ったっだよ。一緒にいたかったのはエリだったんだ、家族の僕達よりも」

私は涙が出てきてしまった。私に会いに帰って来たって言ったジャック。

でもそれだけじゃないって感じてた。やっぱりそういうことがあったんだ。

「ジャックは心からエリのことを愛していたよ。今でもそうだと思う。でも…ジャックも辛いんだよ、エリ。君の所に帰れない訳があるんだ。エミリーが自殺未遂を起こしたんだ。誰かから、ジャックが日本で日本人の彼女とうまくやってるって聞いたみたいなんだ。そこにジャックが現れて好きな人ができたと言ったもんだから発作的に手首を切ってしまったらしい。傷は浅くて命には別状は無かったんだけど、ジャックが日本に帰ったら何度でも自殺するって言ってるらしいんだ。それにジャックにはここに残って自分の面倒を見る義務があると。だからジャックは帰りたくても帰れなかったんだよ。エリ、わかってやってくれないか。アイツはエリに言えなかったんだよ、だから一方的に別れることにしてしまったんだ」

私はエミリーに同情したけど、同時にちょっとムカついた。いったん拒絶したくせにジャックを脅して自分の側におこうなんて。

「ジェイムズ。会えないかな、エミリーに。私、会って直接話しがしたいの」

ジェイムズは不安そうな顔をしたけど、エミリーに電話をかけてくれた。

「エリ、エミリーが君に会ってもいいって言ってる。明日でいいよね」

私が頷くとジェイムズはエミリーと時間を決めて電話を切った。

「エミリーが明日の朝10時に2人のアパートで会うと言ってる。それでいいのかい?エリ」

「ありがとう、ジェイムズ。嫌なことばっかりお願いしちゃってごめんね。本当だったら会えてうれしくて楽しいはずなのに」

ジェイムズはこれ以上無いくらい悲しい顔をして私を見た。私もこんな風にジェイムズと会うことになるなんて悲しくてしょうがなかった。

ジェイムズが沈黙をやぶって私に話しかける。

「エリ、お腹空いてないかい?どこかに食事しに行こうか」

私は食欲なんて無かった。ただ明日の朝まで眠りたかった。

「ジェイムズ、ありがとう。でもお腹空いてないんだ。ちょっと疲れたし、今日はもう寝ようと思うの」

ジェイムズは少しホッとしたような顔をした。

やっぱりジェイムズも辛いんだよね、私といると。気使うだろうし。

私はジェイムズに明日迎えに来てもらう約束をして部屋のドアを閉めた。