Love story Chapter one-3
Chapter one-3
えっマジ、朝の5時に目が覚めた。昨日の夜早く寝たからだ。
2度寝しようかと思ったけどせっかく早く起きたのにもったいない気がしてモソモソとベッドから這い出てみた。
ベランダに出てみると朝の涼しい風が気持ちいい。お散歩にでも行ってみようかな。
健康的でいいじゃないですか、私っぽくないけどたまにはいいよね。
私は何年か前に買ったような記憶があるTシャツとショートパンツに着替えて家を出た。
外は朝焼けで綺麗な空。
早起きは三文の徳とは言ったもんだなーと大きく背伸びをした。ついでに大あくびも。
「Hello」
背後から声がした。
大あくびの状態で振り向くとそこにはお隣のジェイムズが立っていた。
やばい!なんでこんな時に現れるのよぉー。
こんな朝早くに誰かと会うなんて思いもしなかった…
顔を洗って歯磨きしただけの寝起きそのままの頭でジェイムズの前に立っている私。
固まってしまった私はかろうじて「はろー」と答えた。
ジェイムズはバリバリのトレーニングウェア姿。
制服からは想像できなかったけど結構筋肉質。
やっぱり手足長いなー、ジェイムズの長い足に見惚れてしまった。
ジェイムズがアイツよりぜんぜん上手な日本語で聞いてくる。
「エリ、毎朝ジョギングしてるの?」
うーん、ジョギングなんて疲れるのじゃなくてただ歩いてるだけで、それに今日だけなんだけどなあ。
体裁作ってたまにって答えちゃったのが運のつき。それなら一緒にジョギングしようってことになっちゃったよー。
ジェイムズはカナダの学校で習った日本語を馳駆して私と会話を続ける。
学校はどうと聞くと私のお兄ちゃんとはクラスは別だけどいい友達になれそうだと言う。
2人とも優等生って感じで似たもの同士っぽいから仲良くできるんじゃないかなあ。
ジェイムズと話しながらふとアイツのことを思う。
こんな王子様のようなお兄ちゃんがいたらアイツも比べられて大変で嫌じゃないかなって。
なんか私と同じかなあ。私もお兄ちゃんとよく比べられて大変だもんなあ…
私のめちゃくちゃな英語とジェイムズのなかなかいい感じの日本語で会話をしながら1時間が過ぎた。
明日もまたと約束をしてしまってどうしようかと考えながら家に帰ってシャワーを浴びた。
制服を着て朝ごはんを食べている私を見たお兄ちゃんと翔はお互い顔を見合わせている。
翔なんてなにか悪いものでも見たようにぶるぶるっと体を震わせて手を胸の前にあわせて拝んじゃったりして。
なによー、そんなに毎日寝坊ばっかりしてるわけじゃないのに。
私がプリプリしてると…
「今日はどういう風の吹き回しかなあ。母さん、なにか特別の日だった?」
お兄ちゃんが意味ありげな目をしてサグリを入れてくる。
うーんさすがお兄ちゃん、するどいなー。いつもながら油断大敵。
お母さんなんかよりぜんぜん手強い相手だから。
でも早起きしてジェイムズとジョギングしただけなんだから別に隠すことでもないんだけど、
過去の経験上、そうするほうが身のため?!
さっさと朝ごはんを済ませ部屋へ戻って学校へ行く仕度をし、家族から逃げるように家を出た。
あー解放された。でももう肩凝っちゃったよ、まだ学校にも着いてないのに。
高校生してるのも楽じゃないよなー。
大きく背伸びをしたはずみで腕が誰かに当たった。
びっくりして振り返ると迷惑そうな顔をしたジャックが立っていた。
「あっ、ごめんなさい。痛くなかった?」
私は素直に謝った。
でもジャックが無言で私の前を通り越して歩いていくのを見て頭にきた。
「ちょっと!ぶつかったのは悪かったけど、どうして無視するのかなあ。
私は走って追いついてジャックの前に回りこんで言った。
それでもジャックは黙って歩き続けた。
私はますます頭にきて思わずジャックの腕を掴んでひっぱった。
でもジャックはその私の手を払いのけて言った。
「オ マ エ、 ウ ザ イ」
どこで覚えたのよ、そんな言葉!意味わかって言ったの?
誰にもそんなこと言われたことないのに…
私はジャックのその一言にめちゃめちゃ傷ついた。
何も無かったように私の前を歩いて行くジャックの後姿を見ながら私は頭真っ白状態で学校まで辿り着いた。
教室に入って自分の席に着く。当然隣にジャックが座ってる。
オ マ エ ウ ザ イ オ マ エ ウ ザ イ オ マ エ ウ ザ イ
ジャックの言った言葉が頭の中をぐるぐるまわっている。私は泣いたりしないように唇を噛みしめた。
やっと1日が終わってこの席から解放される。
早くここから離れたい。ジャックから離れたい。
私はカバンを抱えて走って教室を出た。
家までなにがなんだかわからないくらい走って帰ったので、玄関に入った途端私は気持ちが悪くなって吐いてしまった。
そして、その夜熱を出して寝込んでしまった。
ジャックに言われたことがショックですっかり落ち込んでしまったせいかもしれない。
しかし、うちの家族ったらもう。私が具合悪くなってもお母さんは鬼の霍乱なんて笑ってるし、
病人を労わる優しい気持ちは無いのかい君達はーと思っていたらお兄ちゃんが部屋に入って来た。
「どうした、えり。朝はあんなに生き生きしてたのにな」
ちょっと心配そうに私の額に手を乗せた。
「まだ熱があるな、明日は学校休んだほうがいいかもしれない。ゆっくりお休み、えり」
そう言って部屋から出て行った。お兄ちゃんはいつもそう。
うちはお父さんが単身赴任をしていて一緒に住んでないのでお兄ちゃんがお父さんの代わり。
小さい頃からお父さんはお兄ちゃんに言ってた。
お兄ちゃん、いつも私を守ってくれる。
なんだかちょっとだけ心が軽くなって私は眠りに落ちた。