Love story Chapter one-5
Chapter one - 5
朝になっていつもの私に戻っていた。
元気に階段を降りてリビングルームで朝ごはんを食べている皆に挨拶する。
「すっかり元気になってよかったわね。」
お母さんが私の分の目玉焼きをお皿に乗せながら言った。
「やっぱりお姉ちゃんはそうじゃなきゃ」と翔。
なぜかお兄ちゃんは無言でコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
「お兄ちゃん、おはよ」
私は後ろから声をかけて顔を覗き込んだ。
「あっ、おはよ」
愛想なく言われて私はちょっと面白くなかった。せっかく元気になったのに知らんぷり。
ふーん、ちょっとからかってやろうっと。
「ねえ、お兄ちゃん。ちゃんとパジャマに着替えて電気消して寝ないと駄目だよー見ちゃったもんねー昨日」
「あら、お兄ちゃんめずらしいわね。お勉強のしすぎで疲れてたのね」
お母さんはお兄ちゃんの額に手を当てて言った。
「熱はないわ、体は大事にして頂戴ね」
「お母さん、お兄ちゃんには甘いよー。この前私には電気代がどーのこーのとかって文句言ったくせにー」
私はお母さんに抗議した。するとお母さんは平然としてこう言ってのけた。
「だってあなたはお勉強じゃなくて他のことで夜更かししてるからよ、そこの違い!」
うーん、やられた。そこをつかれるとなんとも言い返せない。
あれ、困らせようと話題を振った当人がいない。
お兄ちゃんはいつの間にか私とお母さんが話しているうちに2階に上がっていた。つまんなーい。
私は洗面所で歯磨きをしながら考えていた。
ちょっと今日のお兄ちゃん、いつもと違うような感じ。
なんかあったのかなあ。きのうの夜は普通だったのに。
それに夜も寝ぼけてたけどいつもの優しいお兄ちゃんだったしなあ。後で聞いてみよう。
お母さんの学校に遅れるわよーという声がした。
まずい。病み上がりに学校までダッシュはきつい。
急いで家を出たら門の所にアイツが立っていた。
せっかく忘れかけてたのにこの顔を見てまた体が重く感じてきた。
「元気になったのか、遅刻するぞ」
そう言ってアイツは私の手からカバンを取ってなにも無かったように歩き出した。
「自分で持てるからいい!」
私はアイツの後を追いかけてカバンに手をかけた。
「重いからもってやる、オマエは…いいよ、そのままで」
確かに今日は辞書とか入っていつもよりカバンは重かった。
ここで言い争っていてもしょうがないので持ってもらうことにする。
「ありがと…」
仕方ないので手をブラブラさせながらアイツの後ろを歩いた。
アイツが振り返って怪訝そうに私を見る。
「おまえ、どうして俺の後ろを歩いてんだ?」
足の長さの違いなのかもしれないけどアイツは歩くのが速かった。
私が黙っているとアイツが私の歩幅に合わせてゆっくり歩き始めたので自然と2人並んだ。
二人とも黙ったまま…もうすぐ学校に着く…
校門が見えてきたところでアイツがボソッと言った。
「この前は言い過ぎた」
なんのことだろう…考えてみる。
きのうの朝のこと?アイツが去り際になにか呟いたこと。
もしかして、私にそう言うために学校からわざわざ戻ってきてくれたの?!
ホントかな…そうだったら意外といい奴なのかもね、アイツ…
そう思ったら自然と体が軽くなるような気がした。
「置いてくぞ」
という声にハッとして、私はアイツに追いつこうと駆け出していた。