Love story Afterwards -11 (Jake)
Afterwards -11 (Jake)
ジャック兄さんの恋人は小さくてかわいい日本人の女の子だった。
この子が兄さんの愛した人。
僕は兄さんを知らない。
彼女を通して少しでも兄さんのことを感じられたら…理解できたら…
そう思って葬式に行ったんだ。
でも…遠くから見つめるだけで話すことはできなかった。
1度も言葉を交わすこと無く逝ってしまったジャック兄さん。
もっと早く兄さんのことを知っていたら…両親がちゃんと話してくれていたら…
でも、僕には2人を責める資格なんて無い。
なぜなら…僕のせいで…ジャスティン兄さんは…
僕が生まれてきたせいで…ジャステイン兄さんは死んでしまったんだから。
君は赤ちゃんを連れて戻って来た。
この時をどんなに心から待ったことだろうか。
この前、君が日本に帰ると知って空港まで行ったんだ。
…でもやっぱり声を掛けられなかった。
そして君は海の向こうへ行ってしまった。
それから君が居ないこの街で生きる僕の時間は止まったままだった。
早く戻って来て欲しかった。
エリ…兄さんが愛した人の名前。
遠くから君を見つめるだけの毎日。
僕は君の名前を僕の心の中で何度呼んだことだろう。
でもあの日、公園でエリは気付いてくれたね、僕のことを。
確かに…一瞬だけでもエリの瞳の中に僕が映ったはず。
やっぱり兄弟なのかなぁ…僕と兄さんは。
似てるんだ…
ジャック兄さんの友達らしき人が、すれ違いざまに言ったんだ。
"ジャック?まさか…"
僕がなにも言わず歩き続けたので、それ以上無かったけど。
だからエリも…
僕には兄さんの思い出が無い。
でもそれはジェイムズやジョシュアも同じだ。
2人だってジャスティン兄さんとの思い出が無い…
本当の2人の兄弟だったジャスティン兄さん…
小高い丘の上にある記念碑…
ここらから兄さんが育った家が見える。
兄さんが寂しく無いようにって、ここに碑を建てたって聞いたよ。
広い敷地の中で1番眺めがいい所なんだよね。
こんな所で兄さんは育ったんだ。
今日も綺麗な花が添えられている。
そう…毎日僕はここに来てあの人を待つ。
ジャック兄さんが愛した人…
碑の前で兄さんに向かって話をしているエリ。
木の陰に隠れてそっと見つめる。
今日こそは、今日こそは声を掛けよう…
そう思って何日が過ぎただろうか。
でも…今日は。
エリの背後からそっと近づく。
気配を感じて振り返ったエリの瞳が大きく開いた。
「ジャック…?そんな…ことない…ジャックはここに眠ってる…あなたは誰?」
傍に寄ろうとしたらエリが取り乱して走り出そうとしたので、僕は思わずエリを抱きしめてしまった。
「エリ、行かないで」
「違う…ジャックじゃない…、あなたは…」
そして…エリは僕の腕の中で意識を無くした。
僕は君を傷つけるつもりなんか無いんだよ。
エリを抱いて人に見つからないように丘を降りる。
庭に置いてある2人用のブランコにそっとエリを寝かせた。
ここだったらすぐに誰かが見つけてくれるはず…
エリの目に涙がたまっている…そっと指で触れてみた。
「うーん…ジャ…ック」
僕は…僕はジャックじゃないよ。
誰かが近づいて来る…慌てて木の陰に隠れた。
ジェイムズだ…エリに気付いて近寄る。
眠っていると思ってるんだ…
大事そうにエリの髪に触れるジェイムズ。
ジェイムズ…あんたは…エリのことが…好きなんだ。
そんな気がしてた。
あんたのエリへの眼差しにはなにかあると感じてた。
エリの髪から頬にジェイムズの指が動く。
そしてその指がエリの唇で止まった。
一瞬苦しそうな顔をしたジェイムズだったけど、すぐに笑顔になる。
エリが目を開けたから。
突然エリがジェイムズに抱きついた。
かすかに2人の会話が聞こえてくる…
ジェイムズはエリが眠っていたんじゃないことに気付いたみたいだ。
慌ててエリを抱きかかえて家の中に入って行った。
…ジェイムズ。
そんなにあんたはエリを…
指についたエリの涙をじっと見つめる…
僕がエリを好きになってしまったなんて、口が裂けても言えないよ。
エリは兄さんの大事な人なんだから。
それなのに、ジェイムズはエリのことを自分のモノにしようとしている。
このままにしてたらエリは兄さんを忘れてジェイムズのところに行ってしまうかもしれない…なんとかしなきゃ…
僕にはなにも無い…だからエリだけは絶対に失いたくないんだ。
兄さんのところでエリを待つ。
きっと来る…兄さんに会いに来る。
そして君はやっぱり来てくれた。
今日は逃げないよ。
僕にはやらなくちゃいけないことが…
僕はゆっくりエリの正面から近づいた。
顔を上げたエリの顔が歪んだ。
「あなたは…」
エリを恐がらせないように言葉を選んだ。
「自己紹介してもいいかな…僕はジェイク。ジャックの弟になるかな」
「えっ…それって…病院の間違いで離れてしまった…?」
恐々と近づいて来るエリに僕は微笑んだ。
「似てる…初めて会った時のジャックと…」
エリは僕の顔に手を添えてじっと見つめる。
「僕とジャックは2才違いだから…」
「声も…同じ…だわ。まるで…ジャックが生き返ったみたい…」
そう言うとエリは僕の胸に顔を埋めた。
エリ…やっと君は僕の存在に気付いてくれた。
うれしくてエリを抱きしめようとした…その時…
「エリ!なにをしてるんだい?」
そこにジェイムズが現れた。
そして振り向いたエリがジェイムズに向かって言った。
「ジャックの弟のジェイク。そっくりでしょ」
「なんだって?」
ジェイムズが驚いた様子で立ち尽くしている。
「ジャックのバイオロジカルの弟ってことになる…かな、ジェイクです。ジェイムズ…ですよね、よろしく」
エリに手を引かれて家の中に足を踏み入れた。
ジャック兄さんが育った家…なんか感じるような気がする…
兄さん…僕だよ…
ジェイムズは僕を家族に紹介した。
家にはジェイムズのお母さんと弟のジョシュアがいた。
2人とも僕を見て驚いている。
そんなに似てるんだ、僕とジャックは。
リビングルームに案内されてソファに座って皆とお茶を飲む。
沈黙があった後、ジェイムズのお母さんが僕の両親のことを聞いてきた。
なにも答えることは無かったけど、取り合えず元気だと言う。
僕にはどうでもいいこと…それより僕は兄さんのことが知りたい。
2階から子供の泣き声が聞こえてきた。
昼寝でもしていたジャックソンが起きたのかな?
眠そうに目をこすりながらジェイムズに抱っこされて2階から降りてくる。
この子がジャック兄さんの…そして僕と同じDNAを共有している甥にあたる人間。
僕はジャックソンに近寄った。
ジャックソンは興味深そうに僕は見つめる。
でも…ジェイムズの胸の中に顔を埋めてしまった…
君は僕の甥なんだよ、ジェイムズのなんかじゃない。
僕はジャック兄さんの部屋が見たかった。
見せて欲しいと言った僕を、エリが案内してくれた。
ここが兄さんの部屋。
「今、私とジャックソンが使ってるの…」
ベッドメイクされていて、かわいいベッドカバーが掛けられている。
「ここだとジャックソンがよく寝てくれるの」
2人がこの部屋で寝てるんだ…兄さんと一緒に…
僕はうれしくなった。
兄さん、よかったね。エリは…兄さんのものだよ。
ジェイムズになんか…
安心して兄さんの部屋を後にする。
今日はこれで帰ることにしよう。
だって…今日は僕とエリとの始まりに過ぎないんだから…
これから僕達はもっとお互いのことを理解しなくちゃね…
皆に挨拶をして車を出す時にジェイムズの視線を感じた。
ジェイムズは僕を家に連れて来たくは無かった。
でも…エリがもっと僕と話をしたいって言ったから、仕方無く僕を家に招待しただけ。
ジェイムズ…
夜、やっぱりメッセージが来た。エリから。
こっそり自分の携帯の番号を渡しておいたから。
"ジェイク、また会いたい"
明日、公園で会う約束をする。
僕にはわかってたよ…エリには僕が必要だってこと。
それからほとんど毎日、僕達は公園で会った。
ジャック兄さんとの出逢いからをエリがうれしそうに話してくれる。
いつもジャックソンが飽きてしまって、それでまた明日ってことになる。
そうして毎日公園で会って、兄さんとの思い出を聞く日々が。
でも…一昨日も、昨日も、…エリは来なかった。
どうしてエリは来てくれないんだ。
電話をしても出てくれない…
エリ…どうしたの…僕をキライになったの…
涙が流れてきて僕は俯いてしまった。
こんなとこで泣くなんてさ…僕はなにをしてるんだろう…
日が落ちて薄暗くなってきた公園のベンチに座ってエリを待つ…
君はもうここに来ることは無いのか…
人の気配を感じて顔を上げると、そこにはジェイムズが立っていた。
エリはもうここには来ないと言う。
そして僕に、エリをそっとしておいてくれって。
エリが毎晩泣いている…ジャックが恋しくて。
僕がただエリを慰めたいと言うと、ジェイムズはそれだけじゃないだろうと言った。
ずっと前からエリの周りをうろついていた、空港にも来ただろう…何が目的なんだって
そんなこと…あんたに言われる筋合いなんか無い。
全てを持っているあんたになんか、僕の気持ちなんてわからない。
今、エリに必要なのは僕で、あんたじゃないだよ…ジェイムズ。
ジャックと同じ顔、同じ声を持つ僕だからこそエリの傍にいて慰められるんだよ。
………って言ってしまえたら、どんなにすっきりするだろうか…
でも…そうしたらエリに2度と会えなくなってしまう。
だから…僕はこう言うしか無かった。
「僕はただ、兄さん…ジャックの好きだった人、最後に一緒にいたエリと話をしたかっただけだよ。なにも面倒を起こすつもりは無かった。だからエリがそう望むなら僕は消えるよ」
ジェイムズは黙って頷いた。
ジェイムズ…あんたになにができるって言うのかなぁ…まあいい。
そう遠くは無いだろうから…あんたから僕にエリに会ってくれって頼んでくるのは。
思った通りだった。
姿を消せって言われたあの日から、一週間も経たずにジェイムズから電話がきた。
苦しそうなジェイムズの声を聞いて気持ちが良くなる。
ジェイムズ…あの時の強気の発言はどうしたんだろうね…
まあいいよ…解れば。
待ち合わせの場所に遅れて行く。
もちろんジェイムズは来ていた。
コーヒーカップが空になっている…
ちょっと待たせ過ぎたかも…でもこれくらい…
僕の受けた傷に比べたら。
悔しそうな顔をしてジェイムズが言った。
エリが僕に会いたいって。
そんなの当たり前なんだよ。
僕にしかエリを救うことはできないんだから。
ジェイムズの車に乗ってすぐにエリに会いに行く。
僕が車から降りるのを待ちきれないように抱きついてきたエリ。
でも…これは僕のためじゃないって…わかってる…
君は僕は通してジャックを抱きしめているんだよね。
いいんだ、慣れてるよ。
代わりにされるのは…
優しくエリを抱きしめてジャックと同じ声で囁く。
「エリ…会いたかったよ…」
ますます強く抱きついてくるエリを受け止める。
それを顔を歪めてただ見つめることしかできない可哀想なジェイムズ。
そのジェイムズの目の前で、僕はエリの頬にキスをした。
わかったかい、ジェイムズ。
僕は誰にも愛されてない…
だからエリが僕をジャックと思って抱きしめていること…なんとも思ってない…
いつものことだから…
でも…やっぱり辛いよ…エリには僕を見て欲しいんだ。
僕はジャックの代わりじゃない…兄さん達の代わりじゃないんだよ…
誰か…誰か僕を見て…
ジェイムズは僕とエリの関係をよく思ってない。
どうしたらいいのか悩んでるのが手に取るようにわかる。
ほんとわざとらしく、僕がここに来てることを両親が知ってるのかなんてさ。
僕の両親なんて…僕がなにをしてようが気にもかけてない。
学校に行かなくなって家に篭るようになったってなにか言うことも無く…なにも無かったように振舞ってたあの人達。
だから僕が居なくなったって、心配なんかしてるはずなんか無いよ。
居ても、居なくても僕の存在なんか…
こうしてジェイムズの家に居るようになっても、探しになんか来やしないんだ。
なんでこんな時に現れるんだよ…せっかく上手くいってたのに。
ジェイムズのヤツのせいで両親なんか出てきた。
父親と母親がリビングルームのソファに座っている。
「ジェイク…御両親が話があるそうよ」
そう言ってジェイムズのお母さんはリビングルームから出て行った。
「ジェイク、ここでなにをしてるんだ。おまえの家はここじゃないだろう…」
父親の顔には疲労感が漂ってる…きっと早く帰りたいんだ…
「ジェイク…ずっと待ってたのよ。あなたが帰って来ることを…」
そんなこと…口ばっかり。
きっと母さんはジェイムズ達の前で体裁を繕いたいだけなんだ…
「あなたを信じてたから…きっと帰って来てくれるって。私たちはあなたを愛してるのよ…」
「ウソだ…そんなこと…僕を愛してるなんて!」
僕は叫んでいた…
もう…抑えられないよ、僕の心の叫びを…
そして…心の中にあったものを全て両親にぶつけた。
小さい頃から思っていたこと…感じてたこと…
両親の愛が欲しかった。
母さんは僕を抱きしめてくれたことなんて無かった。
僕のせいで…ジャスティン兄さんは死んでしまった。
生まれたばっかりの僕の世話に疲れていた母さんは、兄さんが病気になっていたのを見逃してしまった。
気付いた時にはもう手遅れだった…
そして…母さんはそのショックで僕のことなんて忘れてしまった。
僕は母さんの愛を感じることなく育った。
僕はなにも知らなかった…
ジャック兄さんの死で、過去のことを全て知ったんだ…
両親が自分を抱きしめている時に、ジャスティン兄さんやジャック兄さんを思っていたこと。
自分は2人の代わりでしかなかったこと。
僕は感じてた…両親が僕を通して誰かを見ていたこと。
抱きしめられても、それは他の誰かのためだったこと…
目の前に置かれている果物の盛り合わせ。
その中にある果物ナイフが目に入った…
こんなにも辛いならいっそ。
ナイフを掴んで自分の胸にあてようとした。
母さんの手が伸びてそのナイフの刃先を掴んだ。
僕がナイフを引っ張っても母さんは掴んだままで、母さんの手から血が流れ出す。
それでも母さんは放そうとしない…
僕は泣きながら放せと叫んだ。
母さんも泣きながら叫ぶ。
「絶対に放さない。ジェイクの心の痛みに比べたら、私の手の痛みなんて。あなたを無くしたくないのよ」
「ウソだー、そんなのウソに決まってる」
ナイフを握る僕の手は震えている。
「過去はもう変えられない。でもこれからはおまえを傷つけてきた償いをさせて欲しい」
父さんが震える僕の手に、大きな父さんの手を重ねて言った。
でも…そんなの…信じられない…
僕のことなんて…今まで誰も見てくれることは無かった。
僕は走り出していた。
ここから逃げ出したかった。
どこかへ消えてしまいたい…
でも…辿り着いたところは違っていた。
気付いたら…僕は父さんと母さんにすがって泣いていた。
子供の頃からずっとしたかったこと…
2人に愛して欲しかった…僕を。
僕も父さんと母さんのこと愛してるんだ…
「父さん、母さん…愛してるよ。今まで心配かけてごめんなさい…ごめんなさい…」
父さんと母さんは僕を抱きしめてくれた…
その温もりが僕の心の中に広がっていく…そして…
今…僕達は本当の家族になれたような気がした…
母さんがジャックソンを抱っこして、ジェイムズのお母さんと話をしている。
嬉しそうな母さん…
孫のジャックソンを見つめるその顔は、すっかりおばあちゃんになっちゃって…
その横で父さんとジェイムズとジョシュアがジャスティン兄さんの話をしてる。
こんな風に皆で時間を過ごせるなんて…思いもしなかった。
涙が出そうになって皆から目を逸らした僕を見つめるエリと目が合った。
微笑むエリに外に出ようかって合図する。
そしてエリと2人で庭に出た。
「ジェイクのお母さん、嬉しそうでよかった…」
「うん…ありがとう。でも…ごめん…エリは大丈夫?エリに悲しい思いをさせてしまって…」
「大丈夫。心配しないで。ジェイクの気持ちを聞いてなんか目が覚めた感じがするの。辛くて、哀しい想いをしてるのは私だけじゃないんだって。皆がそれぞれの想いを背負って生きてるんだから…私…独りでがんばろうって思い過ぎてた…人に頼らずジャックソンをちゃんと育てなきゃって、力入り過ぎてたのかも。ジャックはジャックソンやあなたの中にも…それに皆の心の中にちゃんと生きてる。皆と一緒だと思えばジャックも一緒ってことだもの。私、すごくうれしい…ジェイクが居てくれて。だから、また会えるとうれしいよ」
「エリ、僕…また会いに来てもいいんだよね」
「もちろんよ。私達、家族なんだもの」
「ありがとう、エリ…」
僕はエリを抱きしめた。
でも…それは今まで何度もエリを抱きしめた時には感じることは無かった、家族としての暖かいものだった。
「寒くなってきたね、中に入ろうか」
エリを連れて家の中に入ろうとした時、ジェイムズの視線を感じた。
エリにはトイレに行くと言って、外に出て行くジェイムズの後を追う。
「ジェイムズ…ちょっと話をしてもいいかな…」
ジェイムズも僕に話しがあるようだった。
「ジェイムズ…悪かった。許してくれとは言わないよ。僕はジェイムズに酷いことをしてしまった。僕はジェイムズが羨ましかった。全てに囲まれて。愛してくれる家族、全てを持っていた。そんなジェイムズから大事なものを奪ってやろうとした。でも…ジェイムズもずっと辛い思いをしてたこと…ジェイムズのエリへの気持ちを知っておきながら…僕は…」
「それはいい…」
ジェイムズは僕の言葉を遮った。
「それより、オマエは大丈夫なのか。なにかあったら言ってくれ。俺達は兄弟のようなものだ。それに…これからはジャックソンのこともある…ジャックソンにはもう1人おばあちゃんが出来たんだから…」
ジェイムズ…
「ありがとう、ジェイムズ。また…ジャックソンに会いに来てもいいんだよね」
「当たり前だ、オマエもジャックソンのおじさんなんだから、たまに来て面倒見てくれないとな…」
そう言って笑うジェイムズの顔を見ていると切なくなる…
自分の気持ちを伝えられないジェイムズの辛さ…でも…
「僕は兄さんが好きだった人を好きになることで、兄さんとふれ合うことができると思ってしまったんだ…僕のエリへ想いは幻でしか無かった。でも…ジェイムズのエリへの想いは言葉には表せないくらいとても深くて…ジェイムズ…エリを頼むよ。ジャック兄さんだって、ジェイムズだったら…きっと…」
僕は最後まで言えなかった。
だって…ジェイムズがただ悲しそうに微笑んだから…
帰宅したジェイムズ達のお父さんとも会った。
夕食までご馳走になって、すっかり長居をしてしまって。
ジャックソンも僕に懐いてくれて…っていうかオモチャにされたっていうか。
髪は引っ張られるし…馬にされるし。ジャック兄さん似の僕の甥っ子は手強いかも…
名残惜しいけどお別れだね…
皆が外に出て、僕達を見送ってくれた。
両親の車の中から皆に手を振る。
ジェイムズ…エリの横に立っている。
そうやってずっとエリを見守っていくだけで本当にいいの…ジェイムズ。
エリ…ジェイムズはいいヤツだよ。
早く気付いて…
ジェイムズ…いつか…想いが届くことを祈ってるよ。
ありがとう…みんな…