Love story Chapter one-17
Chapter one -17
秋の風が涼しく吹いてきて体育祭の終わりを告げていた。
赤組も白組も無く皆が混ざり合って、校長先生からの最終結果の発表を待つ。
「今年の体育祭は例年にも増して最高だった。これで3年生も心置きなく後輩達に学校を託していけるだろう」
校長先生は頬を紅潮させて話を続ける。
「赤組も白組もどちらも本当にがんばった。先生達もこれには驚いてるんだが…今年の優勝は…赤白両方だ!」
皆がワーッと歓声を上げた。
「ちゃんと得点を確認したので間違いない。それでは両チームのキャプテン、表彰台に上がるように」
お兄ちゃんとジェイムズが台にあがって、校長先生から優勝旗を2人で一緒に受け取った。
そして2人で旗を高く掲げて皆の健闘を讃えた。
それを見ていた父兄や近所の人達からも大きな拍手が沸きあがった。
私と祐美も抱き合って喜びを分かちあった。
こうして最高の体育祭は幕を閉じた。
翔とジョシュアは必ずこの学校に入るって思ったみたい。
2人でがんばろうって言っていた。
お隣のお母さんも感動したみたいで、お母さんに誘ってもらって本当によかったとお礼を言っていた。
私達はまだ興奮が残っていて火照ってる体に、秋の風を受けながら家まで歩いてる。
体は疲れきってもうこれ以上動けないほどなのに、この疲労感がいとおしく感じる。
お兄ちゃん、ジェイムズ、ジャックと一緒にがんばった今日1日。
私の胸の中にたくさんのことが蘇る。
転んでジャックに抱き起こされたこと、借り物レースでジェイムズと一緒に走ったこと、それが素で騎馬戦で3年女子に潰された時にお兄ちゃんに助けられたこと。
それに最後の綱引き、お兄ちゃんとジェイムズの一騎打ちのリレー。
私の大事な宝物。
来年2人が卒業していなくなったらすごく淋しくなるだろうけど、今日のことを思い出せばがんばれるような気がした。
そして前を歩いてるお兄ちゃんとジェイムズの間に入って、2人の腕を取って家まで歩いた。
思い出をありがとう、お兄ちゃん、ジェイムズ。
家の前で別れて私達は中に入った。
別れる直前にお兄ちゃんがジェイムズに何か言った。
何を言ったのかわからないけど、ジェイムズは驚いた表情でお兄ちゃんを見てた。
その後、何も言わずお兄ちゃんがジェイムズの肩をたたいて家の中に入った。
ジェイムズもそのまま家の中に入ってしまったので私は2人の側にいたジャックに聞いた。
「ねえ、ジャック。お兄ちゃん、ジェイムズになって言ったか聞こえた?」
ジャックは私に答えず硬い表情をして行ってしまった。
なんだったんだろう、後でお兄ちゃんに聞いてみようかな。
それにしてもジャックがあんなに不機嫌になって。
どうしてだろう?!
その夜、お風呂に入って体が少し軽くなったようで気持ちよくなってベッドに横になっていた。
うとうとしかけたところにお兄ちゃんが部屋に入って来た。
「お兄ちゃん、白組キャプテンお疲れ様でした。本当に最高の体育祭だったね」
私は眠い目をこすりながら言った。
「そうだね、最高だった。赤白優勝ってのが出来すぎだったけど」
お兄ちゃんがベッドの上に座った。
「ねえ、お兄ちゃん。ジェイムズになんて言ったの??家の前で別れる時?!」
眠いので口が回ってない。
「あー、あれか。敵にしてはよくやったって言ったんだよ」
「でもジェイムズ、ちょっと驚いた顔してたし、ジャックは怒ったような顔してた…」
私は眠くて目を閉じたまま言った。
「ジャックになんて言ったんだい?」
「お兄ちゃんがジェイムズになんて言ったか聞こえた?って。そしたら黙って行っちゃったから…私どうしてなのかなって心配で…」
「えりは心配しないでおやすみ。大したことは無いから。明日になったらジャックも元に戻ってるよ」
お兄ちゃんはそう言った後、私の額に触れて部屋を出て行ったようだった。
お兄ちゃん…今のおやすみのキス?…
そして私は額に残るお兄ちゃんの唇のぬくもりを感じながらまた眠りに落ちた。