Love story Chapter one-21

Chapter one -21

  

祐美からもらった好きな人に導いてくれる石を照明の光に照らして見ていた…

突然リビングルームの電気が消えてびっくり。

そしたらブルーとピンクのキャンドルに炎が灯った大きなケーキを持ってジェイムズのお母さんがキッチンから出てきた。うわぁ…もしかして…バースデーケーキ?

そして、誰ともなくハッピーバースデーの歌を歌いだしてケーキが乗せられたテーブルの前に集まった。

「ジェイムズ、エリちゃん。キャンドルの火を吹き消してね」

私がケーキを覗き込むとそこには大きくジェイムズと私の名前が。

その周りを囲むようにジェイムズと同じ歳の数のブルーのキャンドルと私の歳の数のピンクのキャンドルが並んでる。

「エリ、Make a wish!」

ジェイムズに言われて考えた。何をお願いしようかな。

「もういいかい?じゃあ、一緒に火を吹き消そう」

イチ、ニー、サン、ふーっ。ジェイムズのほうのキャンドルは一瞬で消えてしまったけど私のほうがまだ残ってる。

頬を膨らませて思いっきり息を吹きかけてもまた残ってしまった。

ジェイムズは真っ赤な顔をした私を見て笑った。

「じゃあ、もう1回、一緒にいくよ」

ジェイムズの顔がすぐそこにある。皆の前でこんなに顔を近寄せられたらあがってしまう。

ふーっと息を吐くはずが息以外のものが私の口から吹き出てしまった。

「エリ、そこまでしなくてもちゃんとケーキ大きいところあげるから」

皆に笑われて、赤かった顔がますます赤くなった。

「カットはエリに任せるよ」

そう言ってジェイムズはナイフを私の手に握らせた。

「2人一緒のほうがいいよ。写真撮るのにエリだけだとなんか淋しいよ」

ジョシュアがそう言ってジェイムズの手を私の手の上に乗せた。

なんか披露宴でするウエディングケーキの入刀って感じだよなあ。

けど、ジョシュアがそれでよしよしというような顔をしてカメラを構えてるので私はジョシュアのほうを見て微笑んだ。

パチッ、パチッ。ジョシュアが何枚も写真を撮った。

ジェイムズがもういいだろうという顔でジョシュアを見て、私の手の上に乗せた自分の手に力を入れてケーキを切った。

皆にケーキが行き渡ってジェイムズのお母さんが作ってくれたケーキは、私のつばがかかった部分だけが残ってる。

「大丈夫、私が責任を持ってこの部分を食べますから」

私はそう言って口いっぱいにケーキを頬張った。

「じぇいむず、おいひーね」

ジェイムズは目を細めて私の顔を見た。

「こんなにクリームがついてるよ」

そう言って私の唇の横についたクリームを指で器用にとって自分の口に入れた。

ジェイムズのその行動にドキッとさせられたその時、横でじっと私達を見つめる祐美と目があった。

祐美は顔を背けて窓のほうに歩いて行く。

どうしよう…なにか言わなきゃ。

「遅くなってきたので、そろそろおいとましましょうね」

うちのお母さんがそう言って帰る仕度を始めた。

私はジェイムズに祐美を送っていってもらえないか聞いてみた。

「もちろんだよ。遅くなっちゃったからね」

そう言って窓の側に立っている祐美の所に行って話しかけているジェイムズ。

そして祐美がなにか言いたそうにこっちを見た。

今日来てくれたお礼を言わなくちゃ…それにジェイムズのことも…

玄関の外で祐美を待つことにしよう…

祐美が独りでコートを着て出てきたので声をかけた。

「祐美、来てくれてありがとうね。私とジェイムズはただのお隣さんだから…」

祐美はわかってるっていうように頷く。

玄関のドアが開いて、ジェイムズがコートを着て祐美を送るために出てきた。

「じゃあ…ジェイムズよろしくね…」

「了解、ではお送りしましょう、祐美ちゃん」

2人並んで門を出て行くのを見ていた私に祐美は振り返って言った。

「石、大事にしてね」

2人を見送った私は家の中に戻って片付けの手伝いをした。

一通り家の中を綺麗にしたので私の家族はお隣さんにお礼を言って家に帰って行った。

「今日は本当にありがとうございました。これで失礼します。おやすみなさい」

私は台所で洗い物をしているお母さんとそれを手伝っているお父さんにもう一度お礼を言った。

「こちらこそ、いつもありがとう。これからもよろしく頼むね。それじゃ、おやすみ。えりちゃん。ごめんね、ここで失礼するよ」

そう言って優しくお母さんの肩を抱いて私にたくさん泡の着いたほうの手を振るお父さん。

いいなぁ、私もいつかあんな風になりたいなぁ…

仲良しなお隣のお父さんとお母さんを羨ましく思いながら私はジャックを探した。

ジャック、どこに行っちゃったんだろう。

リビングルームを見渡してもジョシュアしかいないし…

パーティーではあんまり話せなかったし、ちゃんとプレゼントのお礼も言ってなかったから。

「ジョシュア、ジャックもう寝ちゃったのかなぁ」

ソファに座って残り物のお菓子を食べているジョシュアに聞いてみた。

「どうなんだろう、寝たのかなぁ?黙っていなくなっちゃったから…」

黙っていなくなっちゃったのかぁ…

「ジョシュア、今日はありがとね。もう忘れられないよぉ、すごい飾り付け。それじゃおやすみ」

口をモグモグさせながら私にひらひら手を振るジョシュアに私も手を振って玄関に向かった。

もう部屋に上がっちゃったのかなあ。お礼は明日すればいいか。

そう思って玄関のドアを開けたらそこにジャックが立っていた。

予想外だったのでびっくりしてジャックを見つめる私に少し歩こうと言った。

私もちょっと話がしたかったのでウンと頷いてジャックの後に続いた。

「また俺の後ろを歩いてる」

私の手を取って横に並ばせるとその手を掴んだまま自分のコートのポケットに手を入れるジャック。

黙って歩き続けているうちに私は寒くなってきた。

お母さん達が帰る時に私のコートを持って帰ったので私はなにも羽織ってなかったから。

「くしゅん」

くしゃみが出た。ジャックはハッとして私に自分のコートを羽織らせようとした。

「私は大丈夫、コート無かったらジャックも風邪ひいちゃうから」

「俺は大丈夫だ」

やっぱりジャックのコートに包まれてしまった。

「ごめん、ありがとう、あったかいよ、ジャック」

そう言った私の瞳を覗き込むようにジャックは立ち止まった。

そしてコートのポケットに手を入れてなにかを取り出して私の手に乗せた。

「あっ、鶴。これジャックが折ったの?」

ジャックは黙って頷いた。

目に浮かんだのは一生懸命に鶴を折ってるジャックの姿。

「ありがとう、ジャック。これかわいいね。いっぱい練習したの?」

「いや、それが最初のだよ」

「意外に器用なんだあ、ジャックって」

私はジャックの折った鶴を手のひらで揺らして言った。

「今日はありがとう。素敵な思い出になったよ。またジャックと分かち合える思い出ができたね」

真っ直ぐ前を見たまま黙って歩くジャック。

「ねえ、ジャックのお誕生日っていつ?お祝いしないとね」

「7月」

それだけ言って歩き続けるジャック。

私はジャックのこと、なにも知らない。きっと聞いても話してくれないだろうけど。

でもこうやってちょっとづつ私の知ってるジャックが増えていく。

いつかそれがいっぱいになったらジャックは私に心を開いてくれるのかなあ。

それまでゆっくり待つから。ジャックから話してくれるまで。

家の前まで来て私はジャックにコートを返して別れた。

 

家ではお母さんと翔がお隣さんのパーティーの話で盛り上がっていた。

「お兄ちゃんは?」

「2階で勉強してるんじゃない?」

2階に上がってお兄ちゃんの部屋を覗いてみた。

「お兄ちゃん、勉強してた?」

「ああ、始めたところかな。そんな所に立ってないで入っておいで」

勉強してたら邪魔をしたくなかったのでドアから顔だけ出して覗いていた私にお兄ちゃんは言った。

「楽しかったかい?えり」

「うん、皆にお祝いしてもらって幸せだった。いろいろありがとうね、お兄ちゃん」

「じゅあ、ゆっくりおやすみ」

「うん、おやすみ。お兄ちゃんは勉強がんばってね」

自分の部屋に戻って、机の上にジャックからもらった鶴を乗せた。

手に持っていたので少しつぶれてしまったみたい。

鶴を持ち上げて底から空気を入れて膨らませようとしたその時、その小さな穴から中が見えた。

なにか書いてある!

私は鶴を慎重にほどいてみた。

折り紙を伸ばしてみるとそこにはジャックの字でこう書いてあった。

" Dear E, Love you. J "

これって友達として?それとも…

鶴を元に戻してオルゴールの中に大事にしまった。

そのオルゴールを胸に抱きしめて窓からジャックの部屋を見つめた。

ジャックの気持がわからない。私自身の気持もわからない。

そんな時、祐美にもらった石を思い出してスカートのポケットから取り出してみた。

本当に好きな人に導いてくれる石…

この石は私を誰に導いてくれるのかしら。

本当に好きな人って…